塩気しおけ)” の例文
旧字:鹽氣
暗い中を暫らく行くと、石段があって下へ下へと降りて行くようになっていて、下からは塩気しおけを帯びた風が吹き上げて来るようでありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
湯を立ててもらって、久しぶりに塩気しおけのない真水まみずの中に長くなって寝ている最中に、湯殿の戸をこつこつたたくものがある。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこへ塩気しおけがつく、腥気なまぐさっけがつく、魚肉にく迸裂はぜて飛んで額際ひたいぎわにへばり着いているという始末、いやはや眼も当てられない可厭いやいじめようで、叔母のする事はまるで狂気きちがいだ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ただし塩気しおけのある物を好まぬといっている。以上二種の記録は少しずつの異同があり、材料の出処の別々なることを示している。これ恐らくは信用すべき一致であろうと思う。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
アンドレイ、エヒミチはアッとったまま、緑色みどりいろ大浪おおなみあたまから打被うちかぶさったようにかんじて、寐台ねだいうえいてかれたような心地ここちくちうちには塩気しおけおぼえた、大方おおかたからの出血しゅっけつであろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)