土釜どがま)” の例文
二畳の部屋には、土釜どがまや茶碗や、ボール箱の米櫃こめびつ行李こうりや、そうして小さい机が、まるで一生の私の負債のようにがんばっている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
田舎から出て来て、勝手道具をなに一つ買えない家族のために、欠けてはいるが土釜どがまや、茶碗、皿、はしなどをそろえてやったこともあった。
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とさも無雑作むぞうさに云っちまった。ちょうど炭屋が土釜どがまを台所へかつぎ込んだ時のように思われた。人間が遥々はるばる山越やまごえをして坑夫になりに来たんだとは認めていない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
焚火の上には巨大な土釜どがまが、蜘蛛くものような形にかかっていて、ふたの隙から湯気が立っていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土釜どがまの米をすすいだり、皿小鉢を洗っているのを、むこう山の木の間から、樵夫きこりが見かけることがあるくらいで、住んでいるのは、確かに作阿弥老人ひとりのはずだが……。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小山「テンピに使う炭は何がいいのです」お登和嬢「土釜どがまの上等がようございますね。 ...
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「世帯って、なにが世帯さア。こんな、やけトタンの急造きゅうぞうバラックにさ。けた茶碗が二つに、半分割れた土釜どがまが一つ、たったそれっきり、あんたも、あたしも、着たきりじゃないの」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
良寛さんは、小さな土釜どがまに米を研いで入れて、かまどにしかけた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
たとえば朝、勝手で火をおこし、土釜どがまでめしを炊き、味噌汁を作り香の物を切る。ちゃぶ台を出し食器を並べ、残り物があればそれも出した。
季節のない街 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こんな風に云って、恐ろしくひねこびた、土釜どがまの化けたような物を、大事そうにひねくってみせたりする。欲の深いくせに人が好くて、自分はたいそうな目利めききだと信じているところに愛嬌あいきょうがあった。
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)