四歳よつ)” の例文
附いてる里親の愛に溺れ易いのを制するめに看護婦を迎へたりして其児そのこ家内中かないぢゆうが大騒ぎをして居る中へ、四歳よつになる三男のりんが又突然発𤍠した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
おのれが乗物の顔して急ぐ気色けしきも無くすぐる後より、蚤取眼のみとりまなこになりて遅れじと所体頽しよたいくづして駈来かけくる女房の、嵩高かさだかなる風呂敷包をいだくが上に、四歳よつほどの子を背負ひたるが
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
仕掛あり其下はよどみて水深げに青みたるに鵞鳥がてうの四五羽遊ぶさながら繪なり八幡を過ぎ金山かなやま阪下にて車は止る瓜生峠うりふたふげを越ゆるに四歳よつばかりの女子めのこ父に手を引かれて峠を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
これが又一層不便ふびんを増すの料となつて、孫や孫やと、その祖父祖母の寵愛はます/\太甚はなはだしく、四歳よつ五歳いつゝ六歳むつは、夢のやうにたなごころの中に過ぎて、段々その性質があらはれて来た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
アレ住が来た、ソレ住が来た、怖い怖いと泣いて騒ぐ、妾は心の迷いという事もありましょうが、何にも知らぬ三歳みつ四歳よつの小児が、何を怖がって何を泣くか一向解りませぬ
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
思へば女が四歳よつの年、振分髪の童姿、罪も報も無き顔に愛度あどなき笑みの色を浮めて、父上〻〻と慕ひ寄りつゝ縋りまゐらせたるを御心強くも、椽より下へと荒らかに踢落けおとし玉ひし其時が
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
四歳よつ、お五ツと大きゅうおなり遊ばすうち、どこかご気性もお容貌かたちも、臣下の和子わこたちと異なるので、三木どのの千代松ちよまつさまは恐ろしい和子かな——と、街でのおうわさも高かったものと、後々
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
児童こどもなかの遊びにも片親無きは肩すぼる其の憂き思を四歳よつより為せ、六歳むつといふにはまゝしき親を頭に戴く悲みを為せ、雲の蒸す夏、雪の散る冬、暑さも寒さも問ひ尋ねず、山に花ある春の曙
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「お父君は、和子が四歳よつの年の春に、お亡くなり遊ばされたのじゃ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)