くら)” の例文
或はことに利をくらわせて其下をして其上にそむかせて我にこころを寄せしめ置いて、そして表面は他の口実を以て襲って之を取るのであるし
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
七三君は賢弟と南おもてえきして遊ばせ給ふ。掃守かもりかたはらに侍りて七四このみくらふ。文四がもて来し大魚まなを見て、人々大いにでさせ給ふ。
信長は荒木村重むらしげとの初対面に、刀で餅を刺して、壮士ならこれをくらへ、と云つて突き出したが、後年そむかれてゐる。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
婢妾僮僕にくらわしめて秘かに探らせたこともある。彼等の報告は何時も夏姫の貞淑を保証するものばかりである。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そして僮僕どうぼくくらわしめて、玄機の林亭にいることを知った。夫妻は反目した。ある日岳父が婿むこの家に来て李を面責し、李は遂に玄機をうことを誓った。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
丁度墨染すみぞめの麻の衣の禅匠が役者のようなの衣の坊さんを大喝だいかつして三十棒をくらわすようなものである。
『瑣語』に周王太子宜臼を虎にくらわさんとした時太子虎を叱ると耳をれて服したといい
これがくづれを挽回するの策を講ずるなし、かへつてこの気運を煽動し、人才登用を名として、為に門戸を啓き、名望あるの士を迎へてくらはしむるに黄金をもつてし、籠絡して自家の藩籬に入れ
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
ふくめるを吐きて子にくらわしめ
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信長が光秀にしいされた時は、光秀から近江おうみ半国の利をくらわせて誘ったけれども節を守って屈せず、明智方を引受けて城にって戦わんとするに至った。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その脳をくらうというは大眉唾物だ(『淵鑑類函』四三九)。