古股引ふるももひき)” の例文
土手の柳の間に古着ふるぎ古足袋ふるたび古股引ふるももひきたぐいを並べる露店から、客待ち顔な易者の店までが砂だらけだ。目もあけていられないようなやつが、また向こうからやって来る。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
敷居際につくばった捨吉が、肩のあたりに千草色の古股引ふるももひきあかじみた尻切半纏しりきりばんてん、よれよれの三尺、胞衣えなかとあやしまれる帽をかぶって、手拭てぬぐいを首に巻き、引出し附のがたがた箱と、海鼠形なまこなり小盥こだらい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紺とはいえど汗にめ風にかわりて異な色になりし上、幾たびか洗いすすがれたるためそれとしも見えず、えり記印しるしの字さえおぼろげとなりし絆纏はんてんを着て、補綴つぎのあたりし古股引ふるももひきをはきたる男の
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やっとしがらみにかかった海草のように、土方の手に引摺ひきずられた古股引ふるももひきを、はずすまじとて、ばあさんが曲った腰をむずむずと動かして、溝の上へ膝を摺出ずりだす、そのかいなく……博多の帯を引掴ひッつかみながら
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)