南鐐なんりょう)” の例文
神楽坂上かぐらざかうえ御箪笥町おたんすまちまでやっておくれ。あの、ほら、南蔵院なんぞういんさまの前だよ。長丁場でどくだけれども南鐐なんりょうでいいかえ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お久良が気の毒がって、五、六枚の南鐐なんりょうを、手の上へ乗せてやると、宅助のえた心は、銀の色にわくわくとおののいた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の足許に南鐐なんりょうが一枚チャリンと小さい音を立てて躍ったと思うと、眼の前をスレスレに、一梃の駕籠かごが通ります。
これは相変らず、金銀、小粒、豆板、南鐐なんりょう、取交ぜた銭勘定をしているに違いないが、金に渇えているお絹にとっては、この音が気障きざでたまらない。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
南鐐なんりょうと名づけられた宗盛秘蔵の白葦毛しろあしげである。
南鐐なんりょうですか」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
所が、その手を捕まえられた途端に、南鐐なんりょう銀一枚、手のひらに握らされて、軽く、放たれてしまった。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガラッ八の八五郎は銭形平次の前へ、前夜日本橋から芝、田町までの間に拾った南鐐なんりょう、小判、かざぐし、四文銭、二分金、かんざし、懐中鏡——と畳の上へ並べて行ったのです。
七兵衛は得意になって、正徳しょうとく享保きょうほ改鋳金かいちゅうきんを初め、豆板、南鐐なんりょう、一分、二朱、判金はんきん等のあらゆる種類を取並べた上に、それぞれ偽金にせきんまでも取揃えて、お絹を煙に巻いた上に
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぜにの飛んでこないうちに、先に如才じょさいなく礼をいった。そして、お十夜が、投げてくれた南鐐なんりょうを手に握ると蛙のようにピョコピョコして、草履を買うといって湯どうふ屋の外へ出た。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、賽銭箱のふたを取ってかき交ぜ、燭台を斜めにしてのぞいて見ると、これはありきたりのバラ銭とちがい、パッと眼を射る光は、たしかに一分判いちぶばん南鐐なんりょう丁銀ちょうぎん豆板まめいたのたぐい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
で、南鐐なんりょうを一枚恵んでやったというのである。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)