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しゆつかう
すべて、
海上の
規則では、
船の
出港の十
分乃至十五
分前に、
船中を
布れ
廻る
銅鑼の
響の
聽ゆると
共に
本船を
立去らねばならぬのである。
出港のみぎり
白色檣燈の
碎けた
事、メシナ
海峽で、
一人の
船客が
海に
溺れた
事等、
恰も
天に
意あつて、
今回の
危難を
豫知せしめた
樣である。
今や
其二本の
烟筒から
盛んに
黒煙を
吐いて
居るのは
既に
出港の
時刻に
達したのであらう、
見る/\
船首の
錨は
卷揚げられて、
徐々として
進航を
始めた。