でこ)” の例文
創傷は、顱頂骨と前頭骨の縫合部に孔けられている、円い鏨型の刺傷であって、それが非常なおでこであるために、頭顱の略々ほぼ円芯に当っていた。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
といって、もう一人並んでいた奴さんの、今度は膝ッ小僧ではなく、額のおでこへその火を押ッつけたものだから、同じく
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでも、たれもが、御老體ごらうたいすくはれたごとくにかんじて、こと/″\前者ぜんしや暴言ばうげんうらんだ。——ところで、その鐵棒かなぼうをついたでこがとふと、みぎ禪門ぜんもん一家いつか、……どころか、せがれなのだからおもしろい。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日本の今の青年には、ぬかるみでもでこぼこな道でも走破してゆく風の快味がわからない。勤勉の汗を知らない肌には当然それもわかっていない。ゆくての希望がつかめないからだともいえよう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大きな才槌さいづち頭が顔のほうにつれて盛上ってゆき、額にかけて、そこが庇髪ひさしがみのようなおでこになっていた。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「総花にフリいてやるというのに、そう遠慮するなら今度ぁ、狙撃ねらいうちだぞ、それその前につん出た三ぴん野郎! こっちへ向け、そうら、手前のおでこの真中へ、一つお見舞」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)