其品それ)” の例文
「俺もさっきは、土間の隅で待ちながら、思わず、貰い泣きをしていたが、なんだか、其品それは刀だという話じゃないか」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて其品それを無残や余所の蔵に籠らせ、幾干かの金懐中に浅黄の頭巾小提灯、闇夜も恐れず鋭次が家に。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ちょっとラサ府へでも行って何か西洋小間物の奇態な物でも見付け出して買って来ると、其品それを寺へ持帰ってほかの小僧をだまかして売るとかほかの物と取換えるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
左のみ珍らしいとは思ひませぬけれど出際に召物の揃へかたが惡いとて如何ほど詫びても聞入れがなく、其品それをば脱いでたゝきつけて、御自身洋服にめしかへて、あゝわし位不仕合の人間はあるまい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「大作、其品それをそこへ置いて、その方は溜りで待つがよい」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それから其品それを戴いてこっちに帰って参りました。すでにその時に約束した、明日はマニの秘密法力ほうりきを秘密に授けてやるといいますから、ありがたい事と心得てその翌日
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
さのみ珍らしいとは思ひませぬけれど出際でぎはに召物のそろへかたが悪いとて如何いかほど詫びても聞入れがなく、其品それをば脱いでたたきつけて、御自身洋服にめしかへて、ああ、私ぐらゐ不仕合の人間はあるまい
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
のみめづらしいとはおもひませぬけれど出際でぎは召物めしものそろへかたがわるいとて如何いかほどびても聞入きゝいれがなく、其品それをばいでたゝきつけて、御自身ごじゝん洋服ようふくにめしかへて、あゝ私位わしぐらゐ不仕合ふしあはせ人間にんげんはあるまい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
バタを収税する時分にもその通り二十種位のはかりを用います。まず収入する時はそういうふうですけれども、其品それを売る時分には決して大きい枡を用いない。平均の枡よりか少し小さいのを用いる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)