くせ)” の例文
海蛇うみへびられたとは、しんめうことだとおもつてりましたが、それがよく隱語いんご使つか伊太利人イタリーじんくせで、その書面しよめんではじめてわかりましたよ。
田舎へ行脚あんぎゃに出掛けた時なども、普通の旅籠はたごの外に酒一本も飲まぬから金はいらぬはずであるが、時々路傍ろぼうの茶店に休んで、梨や柿をくうのがくせであるから
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
真実に女子といふものは仕方のないものさネ。まんざら素白しろい素生でもねえくせに、男の身躰は、酒で持つんだてえ事を、忘れやアがつたから、まるツきり話せねえや。
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
血相も変はりて、逆上したるらしき庄太郎、これもこなたの常なれど、不貞の名を負はされては、お糸もくせと知りつつだまつてゐられず。一生懸命にて夫の拳の下を潜りながら
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
古河に水絶へずとの譬喩たとひに漏れず、なほいくばくかの資財あるを幸ひに、明日の暮しは覚束なくとも、今日の膳には佳肴を具へて、その日その日を送るをば、元来贅沢に成長せしもののくせとて
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
てんでに我が女房は気にしてるくせにアハ……ナアお糸さうじやないか。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)