候得そうらえ)” の例文
寺方へはそれとなくひまを取り候おもむき申立て候得そうらえどもなほ不審のかど少なからざるにつき、一応住職に聞たゞし候うえ、江戸おもてへ送り申すべき手筈てはずなりとの事に御座候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
港八九は成就じょうじゅいたり候得共そうらえども前度せんどことほか入口六ヶ敷候むずかしくそうろうに付増夫ましぶ入而いれて相支候得共あいささえそうらえども至而いたって難題至極ともうし此上は武士之道之心得にも御座候得そうらえば神明へ捧命ほうめい申処もうすところ誓言せいげんすなわち御見分のとおり本意ほんいとげ候事そうろうこと一日千秋の大悦たいえつ拙者せっしゃ本懐ほんかいいたり死後御推察くださるべくそうろう 不具ふぐ
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
倉皇そうこうの際わずかに前半の一端をうかがひたるのみに御座候得そうらえども錦繍きんしゅうの文章ただちに感嘆の声を禁じ得ず身しばしば自動車の客たる事を忘れ候次第忙中かへつてよく詩文の徳に感じ申候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
追放同様の身と相なり候にり、一先ひとまず国許くにもと立退たちのきたきかんがえなれば、四、五日厄介になりたき趣を頼み候処、心好く承知致しくれ候故、ゆっくり疲労を休め、しまの衣服、合羽かっぱなど買求め候得そうらえども
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
最前よりいろ/\事の道理を分けて御意見申上候得そうらえども、御聞入れ無之候得者これなくそうらえば、是非なき次第に候間、このまゝ手足を縛りてなりとお屋敷へ連れ帰り、御不憫ごふびんながら不義密通のうったえをなしもうすべしと
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)