便すなは)” の例文
〔譯〕心は現在げんざいせんことをえうす。事未だ來らずば、むかふ可らず。事已にかば、ふ可らず。わづかに追ひ纔かに邀へば、便すなはち是れ放心はうしんなり。
胸中一戀字いちこひじ擺脱はいだつすれば、便すなはち十分爽淨、十分自在。人生最も苦しき處、只〻是れ此の心。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
便すなはち宮の夫の愛を受くるを難堪たへがたく苦しと思知りたるは、彼の写真の鏡面レンズの前に悶絶もんぜつせし日よりにて、その恋しさに取迫とりつめては、いでや、この富めるに饜き、ゆたかなるにめる家を棄つべきか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
欧詩に云ふ、「雪裏花開いて人未だ知らず、摘み来り相顧みて共に驚起す。便すなはすべからく酒を索めて花前に酔ふべし、初めて見る今年の第一枝」と。初めただ桃花に一種早く開く者あるのみとおもひき。
〔譯〕けいを讀むは、宜しく我れの心を以て經の心を讀み、經の心を以て我の心をしやくすべし。然らずして徒爾とじ訓詁くんこ講明かうめいするのみならば、便すなはち是れ終身かつて讀まざるなり。
便すなはち以て少陵に追配せんとする、可ならんや。
時時かくの如くば心便すなははなたず。