仕着しき)” の例文
役者の仕着しきせを着たいやしい顔の男が、渋紙しぶかみを張った小笊こざるをもって、次の幕の料金を集めに来たので、長吉は時間を心配しながらもそのまま居残った。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
家政學かせいがくのいくたてもまなびしは學校がくかうにてばかり、まことあけくれみゝりしはいたかぬのきやく風説うはさ仕着しき夜具やぐ茶屋ちやゝへのゆきわたり、派手はで美事みごとに、かなはぬはすぼらしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五月のある日、爽やかな宵、八が來さうな晩でしたが、お仕着しきせの晩酌を絞つて、これから飯にしようといふ頃になつて、漸く個性的な馬鹿笑ひが、路地の闇をゆさぶるのでした。
どこまでも青いお仕着しきせ姿で、鳥獣と同じ生活をして行かなければなりませんでした。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
老僕が無言でわたしに背を向けた途端とたんに、お仕着しきせのひどくすり切れた背中が丸見えになって、そこに赤さびの出た定紋入じょうもんいりのボタンが、ぽつんと一つ残っているのが目についたが
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
役者の仕着しきせを着たいやしい顔の男が、渋紙しぶかみを張つた小笊こざるをもつて、次のまくの料金を集めに来たので、長吉ちやうきちは時間を心配しながらものまゝ居残ゐのこつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)