二七日ふたなぬか)” の例文
もっとも、もう二三日すると二七日ふたなぬかが来るから、事に依ると敬吾が帰って来るかも知れぬが……というのがお神さんの話の概要であった。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小三郎は養父の二七日ふたなぬかの日になって法事をしたところで、翌朝六つ時分になって庖厨かってに火をく者があった。それは五十ばかりの女であった。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かくて一七日ひとなぬか二七日ふたなぬかと過ぎゆくほども、お糸は人の妻となりし身の、心ばかりの精進も我が心には任せぬをうらみ、せめてはと夫の家の仏壇へともす光も母への供養
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
近々とお姿を見、影を去って、ひざまずいて工夫がしたい! 折入ってお願いは、相叶あいかなうことならば、お台所の隅、お玄関の端になりとも、一七日ひとなぬか二七日ふたなぬか、お差置きを願いたい。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へえ。主人の母親が亡くなりましてから、明日で二七日ふたなぬかになりますのでございます。」
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
二七日ふたなぬかの頃から、順造は心身の疲憊に圧倒されながら、漸くはっきりと周囲を意識しだした。凡てが寂寥のうちに落着いてきて、彼の世界へまとまりだした。その世界が吹き曝しだった。
幻の彼方 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いやもうたった一人の娘をなくしてまるきり暗夜やみになったようで、お前さんを見ると思い出します、しかしまア私の娘の方は事が分って、うやって二七日ふたなぬかも済ましたが、遂々つい/\娘の事ばかり思って居て
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
父はこの月の七日なぬか、春雨さむきあした逝水せいすい落花のあわれを示し給いて、おなじく九日の曇れる朝、季叔すえのおじの墓碑と相隣れるところとこしなえに住むべき家と定めたまいつ。数うれば早し、きょうはその二七日ふたなぬかなり。
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二七日ふたなぬかむ、直に丑松は姫子沢をつことにした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「昨日で二七日ふたなぬかです」
謎の咬傷 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
先代の妻は実に優しい女で、夫の言うことに何一つそむいた事がない。そして自分を始め、下々しもじものものをいたわって使ってくれた。あすで二七日ふたなぬかになるというのは、この女の事である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)