乗客じようかく)” の例文
旧字:乘客
汽車に乗つても、電車に乗つても、乗客じようかくは石川氏のカーキ色洋服を見ると、吾がちにすつと立つて席を譲らうとした。石川氏は一寸会釈して平気でそこに腰をかけた。
僕は九月二十日の夜汽車よぎしやで日本へ帰る晶子をマルセエユまで送つて行つた。倫敦ロンドンから着いた平野丸は乗客じようかくが満員になつて居て、一二等を通じて空いた部屋が無かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
にはかぞうるほどの乗客じようかくもなさゝうな、あまさびしさに、——なつ我家わがや戸外おもてからのぞくやうに——上下あとさき見渡みわたすと、なりの寄席よせほどにむら/\とへやも、さあ、ふたつぐらゐはあつたらう。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船が一日遅れたのでマルセエユの聖誕祭クリスマスを観ることの出来ないのを洋人の乗客じようかくは残念がつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
乗客じようかく係が来て莫斯科モスコオから連絡する巴里パリイ迄の二等車の寝台しんだいが売切れたから一等ばかりのノオルド・エキスプレスに乗つてはうかと云つた。八十円増して出せばいと云ふのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)