汽車きしゃも通らず電車もなし、一日にたった二度乗合自動車のりあいじどうしゃが通るきりの、しずかなしずかなこの町に、だしぬけにこんな行列が来たのですから、大へんです。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ある晩方ばんがたのこと、そこに、くろい、みじか洋服ようふくて、あかいえりをした、二人ふたりむすめって、ガラスまど内側うちがわをのぞいていました。乗合自動車のりあいじどうしゃ女車掌おんなしゃしょうでありました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
五、六年前から、馬車の代りに走るようになった乗合自動車のりあいじどうしゃが朝早く通ったのである。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
人をふきとばしそうなサイレンをならしている自動車じどうしゃ往来おうらいいっぱいになってがたがたはしってくる乗合自動車のりあいじどうしゃ、うるさくベルをならしながらとびまわる自転車じてんしゃなどで
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
旅人たびびとは、みちのかたわらにあった、かぶうえこしをおろしてやすみました。そのとき、ちょうどまちほうから、むらほうへゆく乗合自動車のりあいじどうしゃが、しろいほこりをあげてまえとおったのです。
般若の面 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いまは、会社かいしゃへのがけだから、どうすることもできない……。」と、かるく、こころのうちでいって、まどからはなれると、ちょうどそこへきあわせた、乗合自動車のりあいじどうしゃっていってしまいました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)