不届ふとどき)” の例文
旧字:不屆
算盤玉そろばんだまに当って、差引こうというほど生意気なことは無い、いわんや、それに恩をせるに到っては、不届ふとどきといわざるを得ないな。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かゝる不届ふとどきの狼藉者を、かほどの大勢にて御見送り賜はる、貴藩の御政道の明らかなる事、まことに感服にへたりと云ふ可し。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世間ではかえってその人を非常に罵倒ばとうし「彼は外道げどうである。大罪悪人である。ラマに対して悪口をいうとは不届ふとどきである」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
而して彼はさしうつむくおかみに向うて、このうちの最初の主の稲次郎と密通以来今日に到るまで彼女の不届ふとどきの数々を烈しく責めた。彼女は終まで俯いて居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかしながら人間どもは不届ふとどきだ。近頃ちかごろはわしの祭にも供物くもつ一つ持って来ん、おのれ、今度わしの領分に最初に足を
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
遂に「重き御国禁を犯し候段不届ふとどきに付き、父杉百合之助へ引渡し在所において蟄居ちっきょ申し付ける」の宣告を得、檻輿かんよ長門に下り、野山の獄に投ぜられたり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ほめ方に日本ばなれと云ふのは不届ふとどきであるが、とにかく世界一と日本人には思はれると確信して居る。
釣十二ヶ月 (新字旧仮名) / 正木不如丘(著)
地体じたいこの宅従前住人絶え家賃すこぶる低廉なるは、日本で見た事もない化物屋敷だったのを世話した奴も不届ふとどきだが、佐藤は俺より早く宿ったから知っていそうなものと
お照は不届ふとどき至極しごく親爺おやじの量見違いから置去りにされて唯一人世の中へほうり出された娘である。沢次は家倉はおろか女房までもふり捨てて打込んだ自分をば無造作に突き出してしまった女である。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
神職 恐れながら伺い奉る……御神慮におかせられては——かしこくも、これにて漏れ承りまする処におきましては——これなる悪女あくじょ不届ふとどきねがいおもむき……趣をお聞き届け……
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
殊に大体蟄居ちっきょ中の身分梅田源二郎へ面会致す段不届ふとどきに付き、死罪申付ける。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
唯おみきをわたくししょう、不届ふとどきばかりではござりませぬ、貴女様御祭礼の前日夕、おうまやの蘆毛を猿がいて、里方さとかたを一巡いたしますると、それがそのままに風雨順調、五穀成就じょうじゅ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この段不届ふとどきに付き、父杉百合之助へ引渡し在所において蟄居ちっきょ申し付ける。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)