万古ばんこ)” の例文
旧字:萬古
おしのは自分で花屋へゆき、山椿らしい枝ぶりのものを選んで買って来、す物もいちばん素朴な万古ばんこの壺にした。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『北日本の脊梁せきりやうの。千秋万古ばんこやまのまに。偉霊の水をたたへたる。田沢のうみの水おちて。鰍瀬川かじかせがはとながれたり』
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
九時我々は河の畔に出、五マイルにわたって、その静な水面を長閑のどかに漕ぐ舟で行った。我々の上陸地は、万古ばんことして知られる陶器で有名な、四日市であった。
寥廓れうくわくたる万古ばんこ沙漠しやばくを左右にして寝て居るのかと思ふと、この沙漠しやばくの中から予言者がおこつたり
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
御意ぎょいの変らぬうちにと、私は早速御苦労千万にも近所の薬屋から葛根湯を一包とついでに万古ばんこ焼きの土瓶を買って来て、野郎の面前でガス焜炉こんろへ掛けてグツグツと煮たて始めたが
葛根湯 (新字新仮名) / 橘外男(著)
神のを空に鳴く金鶏きんけいの、つばさ五百里なるを一時にはばたきして、みなぎる雲を下界にひらく大虚の真中まんなかに、ほがらかに浮き出す万古ばんこの雪は、末広になだれて、八州のを圧する勢を、左右に展開しつつ、蒼茫そうぼううち
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
くる万古ばんこやみ高空たかぞらの悲哀よぶとか啼く杜鵑ほととぎす(残紅)
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
風竹ふうちく万古ばんこの狸立てりけり春の日暮は愚かなるらし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
万古ばんこの如きは名があっても醜い品のさきがけなのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)