万人ばんにん)” の例文
旧字:萬人
問 予の全集は三百年ののち、——すなわち著作権の失われたる後、万人ばんにんあがなうところとなるべし。予の同棲どうせいせる女友だちは如何?
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
浅黄色あさぎいろにすみわたった空にゆるやかなをえがきつつあったのを万人ばんにんが万人、すこしも気がつかなかったのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伏して念う、某、青年にして世をて、白昼となりなし、六魄ろっぱく離るといえども、一霊いまほろびず、燃前月下えんぜんげっか、五百年歓喜の寃家えんかい、世上民間、千万人ばんにん風流の話本わほんをなす。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし、万人ばんにんが日常食とするお惣菜料理の大部分は、あきらめの料理であって気の毒である。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
多少たしょう再度さいど内省ないせい分析ぶんせきとはあっても、たしかにこのとおりその時心象しんしょうの中にあらわれたものである。ゆえにそれは、どんなに馬鹿ばかげていても、難解なんかいでもかならず心の深部しんぶにおいて万人ばんにん共通きょうつうである。
しら玉の名は美くしき此の塔も見よ踏みたるは万人ばんにんほね
ゲルハルトの声は万人ばんにんすぐれたものであった。
では言水の特色は何かと云へば、それは彼が十七字の内に、万人ばんにんが知らぬ一種の鬼気ききりこんだ手際てぎはにあると思ふ。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(否、絶対に独自の眼を以てするは不可能と云ふもさまたげざる可し。)殊に万人ばんにんの詩に入ることしばしばなりし景物を見るに独自の眼光を以てするは予等の最も難しとする所なり。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)