一方口いつぱうぐち)” の例文
ロダン夫人は無雑作に一方口いつぱうぐち入口いりくちからはひつて来られた。背の低い婦人である。白茶しらちやに白いレイスをあしらつた上被タブリエ風のひろい物を着てられる。自分の手を最初に執つて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
御米およねびにたうとするのを、ようはないからいとめたまゝ宗助そうすけ炬燵蒲團こたつぶとんなかもぐんで、すぐよこになつた。一方口いつぱうぐちがけひかえてゐる座敷ざしきには、もう暮方くれがたいろきざしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
突当りの芥溜ごみためわきに尺二けんあががまち朽ちて、雨戸はいつも不用心のたてつけ、さすがに一方口いつぱうぐちにはあらで山の手の仕合しやわせは三尺ばかりの椽の先に草ぼうぼうの空地面、それがはじを少し囲つて青紫蘇あをぢそ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)