一人前ひとりまへ)” の例文
わたし其時分そのじぶんなんにもらないでたけれども、母様おつかさん二人ふたりぐらしは、この橋銭はしせんつてつたので、一人前ひとりまへ幾于宛いくらかづゝつてわたしました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『馬の様な咳を。ホホヽヽ。』と富江は笑つて、『誰がまた、那麽一寸法師さんを一人前ひとりまへの人待遇あつかひにするもんですか。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いろ/\の抱負もさる事ながら、一人前ひとりまへに自分の口をのりすることが先決問題かと被存候ぞんぜられさふらふ。この頃つく/″\その様な事を考へるやうに相成あひなさふらふ。(後略)
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
ずつとむかうの方には朝鮮人も起きて来て外を見て居るやうであつた。斎藤氏は朝寝坊をしたと云つて、八時すぎに食堂へくのを誘ひに来た。パンと珈琲コオヒイだけの朝飯あさはん一人前ひとりまへに払ふのが五十銭である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
これにて礼服着用の立派な婦人一人前ひとりまへ粧飾品さうしよくひんなり、衣服なり、はた穿物なり、携帯品なり、金をくれば際限あらず。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)