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スクルー
本艦は
一令の
下に
推進螺旋波を
蹴つて
進航を
始めた。
規律正しき
軍艦の
甲板、かゝる
活劇の
間でも
决して
其態度を
亂す
樣な
事はない。
同時に
滊角短聲三發、
蒸滊機關の
響ハッタと
更まつて、
逆に
廻旋する
推進螺旋の
邊、
泡立つ
波は
飛雪の
如く、
本船忽ち二十
米突——三十
米突も
後退したと
思つたが、
此時すでに
遲かつた
舵手に令する航海長の声のほかには、ただ煙突の
煙のふつふつとして白く月にみなぎり、
螺旋の波をかき、大いなる心臓のうつがごとく
小止みなき機関の響きの艦内に満てるのみ。