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ゆりおこ
夜は
深々と
更渡り、八ツの鐘がボーンと響く途端に、
主人が勝五郎を
揺起しました。
ずかと無遠慮には踏込み兼ねて、誰か
内端に
引被いで寝た処を
揺起すといった体裁……
搖起し此事を
内々話しければ友次郎も
悦びて何分共に願ひ候と
言れて亭主も夫婦の者の其
心根を
察し
遣り
本意ならぬ事には
有ど
終に
其意にまかせけり
搖起し是十兵衞
最早今のは
寅刻の
鐘殊に此鐘は何時も少し
遲き故夜の明るに間も有まい眼を
覺して支度せよ
鐵瓶の湯も
温んで有と聞て十兵衞は起上り
顏を
洗はず支度を