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まむ
そのくせ、お綱の今の
真向きな気持——それはやっぱり事情のゆるすかぎり、
容れてやりたい気がするのだ。
真向かいの
鍛冶場で
蹄鉄を鍛える音、
鉄砧の上に落ちる
金槌のとんちんかんな踊り、
鞴のふうふういう息使い、
蹄の焼かれる
匂い、水辺にうずくまってる
洗濯女の
杵音
踵の
黒いのを
眞向きに
見せて、一
本ストンと
投出した、……
恰も
可、
他の
人形など
一所に
並んだ、
中に
交つて、
其處に、
木彫にうまごやしを
萌黄で
描いた、
舶來ものの
靴が
片隻。