真向まむ)” の例文
旧字:眞向
カピはまた主人のかくしをさぐって一本のつなを出し、軽くゼルビノに合図をすると、ゼルビノはすぐにかれの真向まむかいにをしめた。
そして、右手で、肩をつかんで真向まむけに転がすと、半分眼を開いて血にまみれた口を、大きく開けて死んでいたが、顔には、何処も傷が無かった。
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
そのくせ、お綱の今の真向まむきな気持——それはやっぱり事情のゆるすかぎり、れてやりたい気がするのだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真向まむかいの鍛冶かじ場で蹄鉄ていてつを鍛える音、鉄砧かなしきの上に落ちる金槌かなづちのとんちんかんな踊り、ふいごのふうふういう息使い、ひづめの焼かれるにおい、水辺にうずくまってる洗濯せんたく女のきね
貧乏動びんぼうゆるぎと云ふ胴揺どうゆすりで、ふてくされにぐら/\と拗身すねみに震ふ……はつと思ふと、左の足がもものつけもとから、ぽきりと折れて、ポンと尻持しりもちいたていに、かかとの黒いのを真向まむきに見せて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)