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ふきとほ
吹通しの
風砂を
捲きて、
雪駄ちやら/\と
人の
通る、
此方は
裾端折の
然も
穿物の
泥、
二の
字ならぬ
奧山住の
足痕を、
白晝に
印するが
極惡しなど
歎つ。
其の
暗夜から、
風が
颯と
吹通す。……
初嵐……
可懷い
秋の
聲も、いまは
遠く
遙に
隅田川を
渡る
數萬の
靈の
叫喚である。……
蝋燭がじり/\とまた
滅入る。
あしの
根に
近づくと、またこの
長汀、
風さわやかに
吹通して、
人影のないもの
閑かさ。