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ひきそ
山影ながら
颯と
野分して、
芙蓉に
咽ぶ
浪の
繁吹に、
小き
輪の
虹が
立つ——あら、
綺麗だこと——それどころかい、
馬鹿を
言へ——
男の
胸は
盥に
引添ひて
泳ぐにこそ。
引添つて、
手拭を
吉原かぶりで、
艷な
蹴出しの
褄端折をした、
前髮のかゝり、
鬢のおくれ
毛、
明眸皓齒の
婦人がある。しつかりした、さかり
場の
女中らしいのが、もう
一人後についてゐる。
桂木は
拳を握つて石になつた、
媼の袖は柔かに
渠を
蔽うて
引添ひ居る。