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しばたけ
麓に遠き
市人は
東雲よりするもあり。まだ夜明けざるに
来るあり。
芝茸、松茸、しめじ、松露など、
小笹の蔭、芝の中、雑木の奥、
谷間に、いと多き山なれど、狩る人の数もまた多し。
芝茸と
稱へて、
笠薄樺に、
裏白なる、
小さな
茸の、
山近く
谷淺きあたりにも
群生して、
子供にも
就中これが
容易き
獲ものなるべし。
毒なし。
味もまた
佳し。
宇都宮にてこの
茸掃くほどあり。
悪いことはすすめぬから、いまのうちに
柴田家の
旗下について、
後詰の
援兵をあおぐが、よいしあんと申すものじゃ
「おれも
柴田家から
爪弾きをされてみれば、なんとか、ここで
行く
末の方針を立てなければならない
場合だが」
黒革の
陣羽織、これなん、もと
柴田家の
浪人上部八風斎こと、あだ名はれいの
鼻かけ
卜斎でとおる人物。