-
トップ
>
-
さうがんきやう
魔の
日魔の
刻——
亞尼の
顏——
微塵に
碎けた
白色檣燈——
怪の
船——
双眼鏡などが
更る/\
夢まぼろしと
腦中にちらついて
來たが
私は
何氣なく
衣袋を
探つて、
双眼鏡を
取出し、
度を
合せて
猶ほよく
其甲板の
工合を
見やうとする、
丁度此時先方の
船でも、
一個の
船員らしい
男が
いづれも
手に/\
双眼鏡を
携へ、
白巾を
振り、
喜色を
湛えて、
諸君の
好意を
謝する
事であらう。