ぎやく)” の例文
が、まけきらひでもあつたし、またさうなると、今までの力の報いられなかつた悔しさから、成功せいこうへの要求ようきうぎやくつよくなつた。
割にうまく行くんでございますよ。窓から不意に、外の芝生が見えたりいたしますと、今度は、ぎやくに、がつかりすることがございます。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
所在しよざいしるすのに、日本にほんでは、くに府縣ふけんちやう番地ばんちだいよりせうるに、歐米おうべいでは、番地ばんちちやう府縣ふけんくにと、ぎやくせうよりだいる。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あとじさりに、——いま櫛卷くしまきと、島田しまだ母娘おやこ呼留よびとめながら、おきな行者ぎやうじや擦違すれちがひに、しやんとして、ぎやくもどつてた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
座敷ざしきればすぐがけうへだが、おもてからまはると、とほりを半町はんちやうばかりて、さかのぼつて、また半町はんちやうほどぎやくもどらなければ、坂井さかゐ門前もんぜんへはられなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さう言ひ乍らガラツ八は、内懷から拔いた野暮やぼ財布さいふぎやくにしごくと、中からゾロリと出たのは、小判が七八枚に、小粒、青錢取交ぜてつかみほど。
そして強くふり放せば倒れさうなのを加減して、形ばかり勢ひよくふり放した時、自分の手と女の手とがぎやくにつるりとすべり合つたので、その肌のすべツこさがをしめた。
講和問題かうわもんだい新婦しんぷ新郎しんらう涜職事件とくしよくじけん死亡廣告しばうくわうこく——わたくし隧道トンネルへはひつた一瞬間しゆんかん汽車きしやはしつてゐる方向はうかうぎやくになつたやうな錯覺さくかくかんじながら、それらの索漠さくばくとした記事きじから記事きじほとんど
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
熟々つく/″\見て九助儀かくまで白状致し口書へ爪印までなすからは聊かも相違は有まじ然れ共爪印は逆手さかてなり手をぎやくに致し押たるは怪しむべし此儀吟味をとげられしかとあるに理左衞門はまゆしわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同時どうじ滊角きかく短聲たんせい三發さんぱつ蒸滊機關じようききくわんひゞきハッタとあらたまつて、ぎやく廻旋くわいせんする推進螺旋スクルーほとり泡立あはだなみ飛雪ふゞきごとく、本船ほんせんたちまち二十米突メートル——三十米突メートル後退こうたいしたとおもつたが、此時このときすでにおそかつた
ひた恋ふる地上のみどりぎやくにして流動し去るすべてなるなり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
繪卷物ゑまきものぎやくひらきて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
悲観的に見れば、治療と称する何等かの刺激が、ぎやくに患者の健康状態を悪化させる場合が十中の五まであると覚悟しなければなりません。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
宗助そうすけ過去くわこいて、こと成行なりゆきぎやくながかへしては、この淡泊たんぱく挨拶あいさつが、如何いか自分等じぶんら歴史れきしいろどつたかを、むねなか飽迄あくまであぢはひつゝ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
實際じつさいうんのつかないときたらこれほど憂欝いううつあそびはないし、ぎやくうんなみつて天衣無縫てんいむほうパイあつかへるときほど麻雀マージヤンこゝろよ陶醉たうすゐかんじるときはない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
したくらゐで、恐ろしく身輕だから、板塀に飛びついて、踊り舞臺の足場に登り、大夕立の時とぎやくに、自分の家へ歸り、素知らぬ顏をしてゐたんでせう
たとへば年紀ねんきしるすのに、日本にほんではねんげつだいよりせうり、歐米おうべいでは、げつねんぎやくせうよりだいる。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ところ小船こぶねは、なんときか、むかぎしからこのきし漕寄こぎよせたものゝごとく、とも彼方かなたに、みよしあし乗据のつすえたかたちえる、……何処どこ捨小船すてをぶねにも、ぎやくもやつたとふのはからう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゆすりだのかたりだのとは云つしやる昆虫むしけら迄も殺さぬを殺生戒せつしやうかいとは申さずや罪なき一人の百姓を打たゝかんとは出家に似氣にげなき成れ方お釋迦樣は親をころしうを殺す五ぎやく罪人ざいにんでも濟度さいどなさるゝに此御寺を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かたりかけて、轟大尉とゞろきたいゐ虎髯こぜんぎやくねじりつゝ
つまり調てう子がよければ持てんを一き切る事もたびたびで、自然しぜんかちが多いが、それがぎやくになると、どうにもたりがわるくて、負がかさなつて苛々しい
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
縛つたに違ひない、——しかし大勢の人が順々に飛び出して來る裏口へ、番頭を刺してぎやくに飛び込む隙はない筈だ
写真は奇体なもので、先づ人間を知つてゐて、その方から、写真の誰彼だれかれめるのは容易であるが、そのぎやくの、写真から人間にんげんを定める方は中々なか/\六づかしい。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
聞かれ此訴訟のおもぶきにては大いなる罪人つみびとぎやくの者多し是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やがて度盛どもりあかるいなかで動きした。2が消えた。あとから3がる。其あとから4がる。5がる。とう/\10迄出た。すると度盛どもりがまたぎやくに動き出した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
辨次郎は觀念したらしく、腹卷をさぐつて匕首あひくちを一口取出し、柄をぎやくにして、平次のの上に戴せます。
そして、それをれきつてしまふと、はち今度こんどぎやくにあとずさりしながら、自分じぶんしりはうあななかんだ。と同時どうじに、あなのそとにあたま前半身ぜんはんしん不思議ふしぎ顫動せんどうおこしはじめた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すでに春日かすが邦之助といふ許婚のあるお百合を、側近く差出せといふ無法な命令があつたのを、秋山伊織一言の下に斷わつたために、ぎやくに主家を退轉するに至るまで
「先生、失礼ですが、きて御覧なさい」と云ふ。何でも先生の手をぎやくに取つて、ひぢ関節つがひおもてから、膝頭ひざがしらさへてゐるらしい。先生はしたから、到底きられないむねこたへた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
外に氣のついたことはないのか伊三さん。俺が見ると、持つて居る匕首あひくちぎやくだし、膝の間に首を突つ込むやうな恰好で、後ろから曲者に喉を切られ、起き上つたところを
三四日前さんよつかぜんかれ御米およね差向さしむかひで、夕飯ゆふはんぜんいて、はなしながらはしつてゐるさいに、うした拍子ひやうしか、前齒まへばぎやくにぎりゝとんでから、それがきふいたした。ゆびうごかすと、がぐら/\する。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
階子段の下でお杉の袷を見附け、ぎやくに手を通して、胸へ飛沫しぶく血をけたのは憎いぢやないか
事実はむしこれぎやくにして、かないから現代的だと言ひたかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
手搜てさぐりと足搜りで、ようやく娘の床に近づくと、一氣に眼を襲はうとした樣子でしたが、娘のお幾が足の方を枕に、枕の方を足にして、ぎやくに寢て居るのに氣が付かなかつたものか
「あれは繩脱けの名人ですよ。昔はそれを賣物にしてをりましたが、野郎の繩脱けぢや賣物になりませんから、止してしまひました。あの男の節々は、手も足も首もぎやくに曲るんです」
美代吉の手をぎやくに取つてねぢあげると、お柳はからくも喉の手拭を外しました。
二つ三つ小突いて、得意の早繩、膝に敷いた曲者の手をぎやくに取つてあげると
曲者の匕首を持つた手は無手むずつかまれました。ぎやくひねつて膝の下に敷くと
錢形平次の賣り込んだ名前にうそがなかつたら、もう一度このお狩場の四郎を縛つて見るが宜い。愚圖々々するに於ては、怨み重なる平次をこのお狩場の四郎がぎやくに縛るかも知れない、何んと驚いたか。
平次は部屋を出て、縁側をぎやくに店の方へ戻つて見ました。
「手がぎやくになるぜ」