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留
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とど
ふりがな文庫
“
留
(
とど
)” の例文
それは当分その地に
留
(
とど
)
まり、充分看護に心を尽くすべしとか云う、森成さんに取ってはずいぶん
厳
(
おごそ
)
かに聞える命令的なものであった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その後も郷里へ帰省するたびに、時間の許すかぎりは方々を旅行したので、九州の主なる土地には靴の跡を
留
(
とど
)
めているというわけです。
怪獣
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
されどわが胸にはたといいかなる境に遊びても、あだなる美観に心をば動かさじの誓いありて、つねに我を襲う外物を
遮
(
さえぎ
)
り
留
(
とど
)
めたりき。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
御身
(
おんみ
)
とて
何時
(
いつ
)
までか父母の家に
留
(
とど
)
まり得べき、幸いの縁談まことに良縁と覚ゆるに、早く思い定めよかしと、いと
切
(
せ
)
めたる
御言葉
(
おんことば
)
なり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
美しい
姐
(
ねえ
)
さんに船を漕いで貰う、お酌もして貰う、両天秤を掛けるところを、肴は骨までしゃぶッて、瓢箪は一滴を
留
(
とど
)
めずは情け無い。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
▼ もっと見る
即ち、かの政治社会は
潔清
(
けっせい
)
無垢
(
むく
)
にして、一点の
汚痕
(
おこん
)
を
留
(
とど
)
めざるものというべし。
斯
(
か
)
くありてこそ一国の政治社会とも名づくべけれ。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
雪洞
(
ぼんぼり
)
を取って
静
(
しずか
)
に退座す。夫人
長煙管
(
ながぎせる
)
を取って、
払
(
はた
)
く音に、図書板敷にて一度
留
(
とど
)
まり、直ちに
階子
(
はしご
)
の口にて、
燈
(
ともしび
)
を下に、壇に隠る。
天守物語
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
中
(
なか
)
にもなおわずかにわが曲りし
杖
(
つえ
)
を
留
(
とど
)
め、疲れたる歩みを休めさせた処はやはりいにしえの
唄
(
うた
)
に残った
隅田川
(
すみだがわ
)
の両岸であった。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
農家が各自の穀粉を
挽
(
ひ
)
くようになって、一旦起こりかけた
粉屋
(
こなや
)
という専門業が早く衰えてしまい、
名残
(
なごり
)
を粉屋の娘の民謡に
留
(
とど
)
めている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は何とも自身の位置を
説明
(
ときあか
)
しようが無くて、以前に仙台や
小諸
(
こもろ
)
へ行ったと同じ心持で
巴里
(
パリ
)
の方へ出掛けて行くというに
留
(
とど
)
めて置いた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それでは、おもしろくないから
止
(
よ
)
そうというひとがあるかもしれないし、また、それでもよいと思って
留
(
とど
)
まる方もあるだろうと思います。
衰えてきた日本料理は救わねばならぬ
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
降伏は受け難いが、
和睦
(
わぼく
)
を結ぶなれば悪しかるまじ、その代りに、自分は
質子
(
ちし
)
として、筒井家に
留
(
とど
)
まる——という存念と相見える
剣の四君子:02 柳生石舟斎
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さらに心に
留
(
とど
)
めておかねばならぬのは、どんな政治制度でも絶対万能で完全無欠なものなどは、存在し得ないということである。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
ここで、こそこそと例の遊民どもは上陸し、乗客の大部分も下船しましたが、この二人は船の上に
留
(
とど
)
まったまま、談論に
耽
(
ふけ
)
っているのです。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼の眼と同じ高さのあたりに、裁判官席のそこの隅に、二人の人が腰掛けていて、彼の視線はただちにその人たちに
留
(
とど
)
まった。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
少小より尊攘の
志
(
こころざし
)
早く決す、
蒼皇
(
そうこう
)
たる
輿馬
(
よば
)
、情
何
(
いずく
)
んぞ紛せんや。
温清
(
おんせい
)
剰
(
あま
)
し得て兄弟に
留
(
とど
)
む、
直
(
ただ
)
ちに東天に向って怪雲を掃わん
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
貴方
(
あなた
)
はお気の毒ながらたいへん醜いおかたゆえ、私のところに
留
(
とど
)
まっていただこうとは思いませぬから、ほんとうのことを申しますが、実は
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
母に慈愛のまなざしで諭されたことも有ったろうが、それも勿体ないが
雲辺
(
うんぺん
)
の
禽
(
とり
)
の影、
暫時
(
しばし
)
のほどしか心には
留
(
とど
)
まらなかったのであったろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今羅摩が牲にせんとせる馬、
脱
(
のが
)
れて私陀の二児の住所へ来たので、二児
甫
(
はじ
)
めて五歳ながら勇力絶倫故、その馬を
捉
(
とら
)
え
留
(
とど
)
めた。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
佐野が宿は源左衛門の宿なるべく、鉢の木の梅松桜を伐りたる面影を
留
(
とど
)
めて夏季の藜を伐るに転用したる処既に多少の厭味があるやうに思ふ。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
善
(
よ
)
くも書かれたり、ゆるゆる
熟読
(
じゅくどく
)
したきにつき
暫時
(
ざんじ
)
拝借
(
はいしゃく
)
を
請
(
こ
)
うとありければ、その
稿本
(
こうほん
)
を翁の
許
(
もと
)
に
留
(
とど
)
めて帰られしという。
瘠我慢の説:01 序
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
上野戦争後諸藩引払ひの時余の一家は皆尾州へおもむきたれど、ただ父なる人のみはなほ
留
(
とど
)
まりて江戸の邸を守り給へり。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
去り行く青春を
惜
(
おし
)
む心である。これは空中の日の歩みを一つの所に
留
(
とど
)
めて動くなと望むに
斉
(
ひと
)
しい気持であると自嘲した。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
患者
(
かんじゃ
)
は
多
(
おお
)
いのに
時間
(
じかん
)
は
少
(
すく
)
ない、で、いつも
極
(
ご
)
く
簡単
(
かんたん
)
な
質問
(
しつもん
)
と、
塗薬
(
ぬりぐすり
)
か、
※麻子油位
(
ひましあぶらぐらい
)
の
薬
(
くすり
)
を
渡
(
わた
)
して
遣
(
や
)
るのに
留
(
とど
)
まっている。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
扇紋
(
おうぎもん
)
は
畳扇
(
たたみおうぎ
)
として直線のみで成立している間は「いき」をもち得ないことはないが、
開扇
(
ひらきおうぎ
)
として
弧
(
こ
)
を描くと同時に「いき」は
薫
(
かおり
)
をさえも
留
(
とど
)
めない。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
再会期し難きを思えば、入宋を
留
(
とど
)
め給う師の
命
(
めい
)
もそむき難い。しかし今身命を顧みず入宋求法するのは、慈悲によって衆生を救い得んためである。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
その間に、大地主と船長とは甲板に
留
(
とど
)
まり、船長は
舵手
(
コクスン
)
に声をかけた。船に残っている者の中の
頭立
(
かしらだ
)
った男なのである。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
無論一体に
疵
(
きず
)
だらけで
処々
(
ところどころ
)
鉛筆の落書の
痕
(
あと
)
を
留
(
とど
)
めて、腰張の新聞紙の
剥
(
めく
)
れた蔭から隠した
大疵
(
おおきず
)
が
窃
(
そっ
)
と
面
(
かお
)
を出している。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
殊にそれが、
婉然
(
えんぜん
)
と微笑んだ時の、忘れ難き魅力に至るまで、その昔の
俤
(
おもかげ
)
をそのまま
留
(
とど
)
めてはいたけれど、十幾年の歳月は、可憐なお下げの小学生を
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この
夕
(
ゆふべ
)
隆三は彼に食後の茶を
薦
(
すす
)
めぬ。一人
佗
(
わび
)
しければ
留
(
とど
)
めて
物語
(
ものがたら
)
はんとてなるべし。されども貫一の
屈托顔
(
くつたくがほ
)
して絶えず思の
非
(
あら
)
ぬ
方
(
かた
)
に
馳
(
は
)
する
気色
(
けしき
)
なるを
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
名物の
雹
(
ひょう
)
その時はもう長く山上に
留
(
とど
)
まって居ったものですから余程寒くなりましたが、それをも打忘れたです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
写真帖には処女の姿も幾枚かあったが、結婚の記念撮影を初めとして、いろいろの場合の面影が
留
(
とど
)
めてあった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それは自分に
留
(
とど
)
まらないで絶えず外へ出てゆく好奇心のひとつの大きな原因になっている。嫉妬のまじらない無邪気な好奇心というものは如何に
稀
(
まれ
)
であるか。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
この時
賊
(
ぞく
)
は
周章
(
しゅうしょう
)
の余り、有り合わせたる
鉄瓶
(
てつびん
)
を春琴の頭上に投げ付けて去りしかば、雪を
欺
(
あざむ
)
く
豊頬
(
ほうきょう
)
に熱湯の
余沫
(
よまつ
)
飛び散りて
口惜
(
くちお
)
しくも一点
火傷
(
やけど
)
の
痕
(
あと
)
を
留
(
とど
)
めぬ。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
マザリンの
下
(
もと
)
に仏国は光威を欧洲に輝かせしもこれみな外貌の虚飾にして内に
留
(
とど
)
むべからざる腐敗の
醸
(
かも
)
しつつありしなり、ルイ十四世に至てこの虚勢その極に達し
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
洗練に洗練を重ね、一点のしみも
留
(
とど
)
めない女の
清々
(
すがすが
)
しさ、恐らく、そのあらゆる分泌物が
馥郁
(
ふくいく
)
として匂い、踏む足の下から、百花
妍
(
けん
)
を競って咲き乱れることでしょう。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
老いそめた女の化粧はなお一点の美くしさを
留
(
とど
)
めながらも、化粧をするという事その事がやがて一つの淋しさを思わしめる。この句もその心持を言っておるのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
弱い者いぢめは
此方
(
こつち
)
の耻になるから三五郎や美登利を相手にしても仕方が無い、正太に末社がついたらその時のこと、決して
此方
(
こつち
)
から手出しをしてはならないと
留
(
とど
)
めて
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
私
(
わたくし
)
はどこまでも
三崎
(
みさき
)
に
留
(
とど
)
まり、
亡
(
な
)
き
良人
(
おっと
)
をはじめ、一
族
(
ぞく
)
の
後
(
あと
)
を
弔
(
とむら
)
いたいのでございます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
いつかまぶたは閉じるのじゃ、昼の景色を
夢
(
ゆめ
)
見るじゃ、からだは枝に
留
(
とど
)
まれど、心はなおも飛びめぐる、たのしく
甘
(
あま
)
いつかれの夢の光の中じゃ。そのとき俄かにひやりとする。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
聴けば、杉田先生はお年寄役だけに、三十六計の奥の手も余り穏かならじとあって、単身踏み
留
(
とど
)
まり、なんとかかんとか
胡魔化
(
ごまか
)
して、荷物をことごとく巻上げて来たとの事だ。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
又
他
(
た
)
の四人の女も王様のお側付となって、直ぐにその日から御殿に
留
(
とど
)
まる事になりました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
それ故
一々
(
いちいち
)
名を記そうとは企てません。こういう気持こそは、もっと尊んでよいことではないでしょうか。実に多くの職人たちは、その名を
留
(
とど
)
めずにこの世を去ってゆきます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
結句「二時にしありけり」と云わないで『ありき』と
留
(
とど
)
めた処に深い感じがある。この一連の歌は、題目も新しく感じ方も新しい。そうして言外に寂しい情調が、しみ出て居る。
歌の潤い
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
非
(
ひ
)
、
終
(
つひ
)
に
韓
(
かん
)
の
爲
(
ため
)
にして、
秦
(
しん
)
の
爲
(
た
)
めにせず、
(一一六)
此
(
こ
)
れ
人
(
ひと
)
の
情
(
じやう
)
也
(
なり
)
。
今
(
いま
)
、
王
(
わう
)
、
用
(
もち
)
ひず、
久
(
ひさ
)
しく
留
(
とど
)
めて
之
(
これ
)
を
歸
(
かへ
)
さば、
此
(
こ
)
れ
自
(
みづか
)
ら
患
(
うれひ
)
を
遺
(
のこ
)
す
也
(
なり
)
。
(一一七)
過法
(
くわはふ
)
を
以
(
もつ
)
て
之
(
これ
)
を
誅
(
ちう
)
するに
如
(
し
)
かず
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
人は魚の如く其水の中を登って行くのであるが、清冷な水は岩面に
些
(
いささか
)
の汚泥をも
留
(
とど
)
めていないので、何処を蹈んでも更に滑る憂がない。約一時間半も登ると右から一つの沢が来る。
笛吹川の上流(東沢と西沢)
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
秋風吹き
初
(
そ
)
めて、避暑の客は都に去り、病を養う
客
(
ひと
)
ならでは
留
(
とど
)
まる者なき九月
初旬
(
はじめ
)
より、今ここ十一月
初旬
(
はじめ
)
まで、日の
温
(
あたた
)
かに風なき時をえらみて、五十あまりの
婢
(
おんな
)
に伴なわれつつ
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
私どもが漁場へ着いて間もなく
疾風
(
はやて
)
が吹き起って、帰ることなどは思いもよらないくらいに海峡がひどく大荒れになったために、一週間近くも漁場に
留
(
とど
)
まっていなければならなくて
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そこへ単身徒歩で登場して牛に直面し、機を見て急所へ
短剣
(
エストケ
)
の一撃を加えて
目出度
(
めでた
)
く
仕留
(
しと
)
めるのが、3のマタドウル・デ・トウロスだ。この
留
(
とど
)
めをさす役が、闘牛中の
花形
(
エスパダ
)
なのである。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
死んだ後までも彼らが
永
(
とこし
)
えに、彼女の胸に
懐
(
なつ
)
かしい思い出の影像となって
留
(
とど
)
まっていると思えば、やっぱり、私は、
捕捉
(
ほそく
)
することの出来ないような、変な
嫉妬
(
しっと
)
を感じずにはいられなかった。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
留
常用漢字
小5
部首:⽥
10画
“留”を含む語句
立留
逗留
踏留
留置
小留
歌留多
繋留
停留場
留守中
滯留
御逗留
取留
引留
留針
長逗留
呼留
留金
抑留
三留野
突留
...