)” の例文
にごれるみづいろへて極彩色ごくさいしき金屏風きんびやうぶわたるがごとく、秋草模樣あきくさもやうつゆそでは、たか紫苑しをんこずゑりて、おどろてふとともにたゞよへり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして天児屋根命あめのこやねのみこと太玉命ふとだまのみこと天宇受女命あめのうずめのみこと石許理度売命いしこりどめのみこと玉祖命たまのおやのみことの五人を、お孫さまのみことのお供のかしらとしておつけえになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
やうやあさはなれてそら居据ゐすわつた。すべてのものあかるいひかりへた。しかしながら周圍しうゐ何處いづこにも活々いき/\したみどりえてうつらなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
天子てんしさまはたいそう頼政よりまさ手柄てがらをおほめになって、獅子王ししおうというりっぱなつるぎに、おうわぎ一重ひとかさえて、頼政よりまさにおやりになりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と云って彼に寄りうた。ヒューッと風がけたたましく唸るかと思ふと、屋根瓦が飛んで、石垣に強く打突ぶつつかって砕ける音がした。
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
あらゆる科学文明は人類に生活の「便宜コンビニエンス」を与えると同時に、殺人の「便宜」までを景品としてえることを忘れはしなかった。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
名は百合子ゆりこと云った。歩く時は、いつも男の肩に寄りっていなければ気が済まないらしく、それがこの少女の魅力みりょくでもあった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
汽車きしゃは、たか山々やまやまのふもとをとおりました。おおきなかわにかかっている鉄橋てっきょうわたりました。また、くろいこんもりとしたはやしってはしりました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんな折の氏の家庭こそ平常とは打ってかわって実に陽気で愉快ゆかいです。その間などにあって、氏に一味ひとあじの「如才じょさいなさ」がいます。
もとより彼女のこう云ったのは少しでも保吉の教育に力をえたいと思ったのであろう。彼もつうやの親切には感謝したいと思っている。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「手児」(巻十四・三三九八・三四八五)の如く、親の手児という意で、それに親しみの「な」のわったものと云われている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
生中なまなかこがれて附纒つきまとふたとて、れてはれるなかではなし、可愛かあいひと不義ふぎせてすこしもれが世間せけんれたらなんとせう
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
変えて云うのであるではそのお腹の子の父親はと聞けばそればかりはたずねないで下さりませどうでその人にう積りはござりませぬという。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どれも頑愚な凡石か、かがまっている駄石ばかりだ。石にたいして深い観賞眼があるわけでない彼にしても自然見飽きずにはいられない。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煮たのも来る。舞茸まいたけ味噌汁みそしるが来る。焚き立ての熱飯あつめしに、此山水の珍味ちんみえて、関翁以下当年五歳の鶴子まで、健啖けんたん思わず数碗すうわんかさねる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
だれひとり、その勇壮活発ゆうそうかっぱつ歌詞かしをうたって男先生の意図いとおうとするものはなく、イイイイ ムイミーと歌うのだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ドイツ文の原文にえて、族王エミアが読めるようにというのでアフガニスタン語の翻訳をたずさえて行く。問題はこの訳文だった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
そのうちに荒田老にっていた鈴田が、平木中佐と何かしめしあわせたあと、朝倉先生の近くによって来てたずねた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
忘れもしない、そのとき、その貧しい老婆のいまわのとこに付きいながら、わたしは思わずジナイーダの身になって、そら恐ろしくなってきた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
勿論もちろん、あなたの御迷惑ごめいわくを考え、あっさりした御手紙をえておいたのですが、きっと返事が来るだろうと信じていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
もっとも君の見らるる通り、僕の家には、装飾品もなければ骨董品こっとうひんもないし、また僕の着る着物きものは、家内のも子供のも同然、流行にはわない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
みづはじいてふたつが一所いつしよあつまつたとふよりも、みづはじかれたいきほひで、まるつた結果けつくわはなれること出來できなくなつたとひやうするはう適當てきたうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
玄関の土間らしい月の光の朦朧もうろうした柱にうて、細面ほそおもての女が大きな舌、六七寸もありそうに思われる大きな長い舌をだらりとたれて立っていた。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
う思つて小池は、ハツと夢からめたやうに、自分に引きつて低首うなだれつゝ弱い足を運んでゐるお光の姿を見た。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぎに案外あんがいおおいのはわか男女だんじょ祈願きがん……つまりいた同志どうし是非ぜひわしてほしいとったような祈願きがんでございます。
現存石器時代人民中には、此の如き物にみぢかへて短刀たんとうの如くに用ゐ、或は長き柄を添へてやりとする者有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
認め右道具屋の請取をへ町奉行所へ差出たり之に依て翌日同心原田はらだ大右衞門下谷の自身番じしんばんへ出張し家主いへぬしひろ次郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うもこの煎茶せんちやの器械からお茶碗ちやわんからお茶托ちやたくまで結構尽けつこうづくめ、中々なか/\お店やなにかでういふものを使ふお店は無い事で、うもお菓子までへられて恐入おそれいります
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
後ろ向きになつてゐたので顔は分らなかつたが、若い女の人らしく赤ん坊にでもしてゐる様子だつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
その男がつけ足していうには、あの小男の首領らしい男は結局自分が連れっていたあの女であったらしい。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その夜、私はミラア先生がして呉れるやうになつてゐた。彼女は私に手傳つて着物をがしてくれた。
やがて、その商人あきうどは、やう/\のことでもと天竺てんじくにあつたのをもとめたといふ手紙てがみへて、皮衣かはごろもらしいものをおくり、まへあづかつた代金だいきん不足ふそく請求せいきゆうしてました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
たいくつした見物人の話声が一時いちじんで、場内ぢやうないは夜の明けたやうな一種の明るさと一種の活気くわつきへた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
私のはいつのにかわきしたくゞつてゐました。私は東明館前とうめいくわんまへからみぎれて、わけもなくあかるくにぎやかなまち片側かたがはを、店々みせ/\うて神保町じんぼうちやうはうへと歩いて行きました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
雪につぶされざるため也。庭樹にはきは大小にしたがえだまぐべきはまげて縛束しばりつけ椙丸太すぎまるた又は竹をつゑとなしてえだつよからしむ。雪をれをいとへば也。冬草ふゆくさるゐ菰筵こもむしろを以おほつゝむ。
そんな柳吉のところへ蝶子から男履おとこばきの草履をおくって来た。えた手紙には、大分永いこと来て下さらぬゆえ、しん配しています。一同舌をしたいゆえ……とあった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
何某という軍医、恙の虫の論になどえて県庁にたてまつりしが、こはところの医のを剽窃ひょうせつしたるなり云々。かかることしたりがおにいいほこるも例の人のくせなるべし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうちに驅け付けた惡者の仲間が二人、三人、小屋の中に裏切つたお六と、錢形平次が居るものと早合點して、どつと喊聲かんせいをあげ乍ら、小屋の四方にまきへます。
とうさんはこの少年せうねん讀本とくほんかうとおもつたころに、べつにつくつていたおはなしが一つあります。それは『兄弟きやうだい』のおはなしです。それをこのほんのちへようとおもひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
梟のお父さんは、首を垂れてだまっていていました。梟の和尚おしょうさんも遠くからこれにできるだけ耳を傾けていましたが大体そのわけがわかったらしく言いえました。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
足下きみ同情どうじゃう多過おほすぎるわし悲痛かなしみに、たゞ悲痛かなしみへるばかり。こひ溜息ためいき蒸氣ゆげけむりげきしてはうち火花ひばならし、きうしてはなみだあめもっ大海おほうみ水量みかさをもす。
時の将軍家家慶いへよし公は、前の大御所家斉いへなりが女の唇が好きだつたのと違つて、若芽薑が何よりも好物であつた。若芽薑といへば、どんな場末の安料理にもはつてゐるものだ。
またうでには腕環うでわゆびには指環ゆびわをつけ、あしにはきんめっきしたうつくしいどうくつへてあるばかりでなく、このはかからは支那しなからわたつた銅器どうき、がらするいをはじめ、馬具ばぐ刀劍とうけん
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「そいつあ今も云った筈だ。たかが窩人の娘じゃねえか。まさか一生うことも出来めえ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
チベットでは手紙を出す時分には必ず土産みやげえてやる。相当の土産がないと、この間申しましたカタという薄絹うすぎぬを入れてやるのが例ですから、私も相当の土産を贈ってやりました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かくてはその災害さいがいを待つにおなじくして本意ほんいに非ざれば、今より毎年寸志すんしまでの菲品ひひんていすべしとて、その後はぼんくれ衣物いぶつ金幣きんへい、或は予が特に嗜好しこうするところの数種をえておくられたり。
ともう一度、低声につぶやいて、そっとその白覆面白装束の武士に寄りった。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
或時あるとき徒然つれ/″\なるにまかせて、書物しよもつ明細めいさい目録もくろく編成へんせいし、書物しよもつにはふだを一々貼付はりつけたが、這麼機械的こんなきかいてき單調たんてう仕事しごとが、かへつて何故なにゆゑ奇妙きめうかれ思想しさうろうして、興味きようみをさへへしめてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
庭は一隅ひとすみ梧桐あおぎりの繁みから次第に暮れて来て、ひょろまつ檜葉ひばなどにしたた水珠みずたまは夕立の後かと見紛みまごうばかりで、その濡色ぬれいろに夕月の光の薄く映ずるのは何ともえぬすがすがしさをえている。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかも、だんだん、その表情に恐怖と不安とがわって来て、やがて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)