三度さんど)” の例文
もし運命が許したら、私は今日こんにちまでもやはり口をつぐんで居りましたろう。が、執拗しつおうな第二の私は、三度さんど私の前にその姿を現しました。
二つの手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たらささうなものだつて、——先生、自分ぢや何にもらない人だからね。第一僕が居なけりや三度さんどめしさへへない人なんだ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
第二 毎日まいにち食餌しよくじ三度さんどかぎり、分量ぶんりやうさだし。夜中やちゆう飮食いんしよくせざるをもつともよしとす。たゞし食後しよくご少時間しばらく休息きうそく運動うんどうはじむべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
繰返くりかへして三度さんど、また跫音あしおとがしたが、其時そのときまくらあがらなかつた。室内しつない空氣くうきたゞいやうへ蔽重おほひかさなつて、おのづと重量ぢうりやう出來できおさへつけるやうな!
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
りしも二度にど三度さんど車夫しやふまたみちくはしからずやあらんいま此職このしよくれざるにやあらんおなみち行返ゆきかへりてかうてもしたらんにつよくいひてもしもせずしめすがまゝみちりぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ピストルで決闘すること三度さんど、女を棄てること十二人、そして九人の女に棄てられたんですぞ! さよう! ひと頃はこれでも、阿呆あほな真似をしたり、べたべた言い寄ったり
ながむれば一せき海賊船かいぞくせん轟然ごうぜんたるひゞき諸共もろともに、船底せんてい微塵みぢんくだけ、潮煙てうゑんんで千尋ちひろ波底はていしづつた、つゞいておこ大紛擾だいふんじやう一艘いつそう船尾せんび逆立さかだ船頭せんとうしづんで、惡魔印あくまじるし海賊旗かいぞくきは、二度にど三度さんど
ひたさにようなきかど二度にど三度さんど、と心意氣こゝろいきにて、ソツと白壁しろかべ黒塀くろべいについてとほるものを、「あいつ板附いたつきはべん」と洒落しやれあり、ふる洒落しやれなるべし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その時ひっそりした場内に、三度さんど将軍の声が響いた。が、今度は叱声しっせいの代りに、深い感激の嘆声だった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
好事魔こうじまおほしとはよくひとところで、わたくしその理屈りくつらぬではないが、人間にんげん一生いつせう此樣こん旅行りよかうは、二度にど三度さんどもあることでない、其上そのうへ大佐たいさ約束やくそく五日目いつかめまでは、三日みつかひまがある、そこで
三度さんどとも宜道ぎだう好意かうい白米はくまいかしいだのをべたにはべたが、副食物ふくしよくぶつつては、たのか、大根だいこんたのぐらゐなものであつた。かれかほおのづからあをかつた。まへよりも多少たせう面窶おもやつれてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしもおあとからまゐりまするとてのうちには看護まもりひまをうかゞひていだすこと二度にど三度さんどもあり、井戸ゐどにはふたき、きれものとてははさみ一挺いつちやうにかゝらぬやうとの心配こゝろくばりも、あやふきはやまひのさするわざかも
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二十はたち前後の支那人は大机の前を離れると、すうっとどこかへ出て行ってしまった。半三郎は三度さんどびっくりした。なんでも今の話によると、馬の脚をつけられるらしい。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
……つてゐるのは、あきまたふゆのはじめだが、二度にど三度さんどわたしとほつたかずよりも、さつとむらさめ數多かずおほく、くもひとよりもしげ往來ゆききした。尾花をばななゝめそよぎ、はかさなつてちた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
回想くわいさうすればいまから四ねんまへわたくし日出雄少年ひでをせうねんいだいて、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつともに、海中かいちう飛込とびこんだとき二度にど三度さんど貴女あなたのおをおもうしたが、きこゆるものは、かぜおとと、なみひゞきばかり、イヤ、たゞ一度いちど
さききてもるかきかれませねばなににてもよしくるまたのみなされてよとにはか足元あしもとおもげになりぬあの此樣こんくるまにおしなさるとかあの此樣こんくるまにと二度にど三度さんどたかかろ點頭うなづきてことばなしれも雪中せつちゆう隨行ずゐかう難儀なんぎをりとてもとむるまゝに言附いひつくるくだんくるまさりとては不似合ふにあひなりにしき上着うはぎにつゞれのはかまつぎあはしたやうなとこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「自分はまだ生涯に三度さんどしか万歳を唱へたことはない。最初は、……二度目は、……三度目は、……」制服を着た大学生は膝のあたりの寒い為に、始終ぶるぶる震へてゐた。
漱石山房の冬 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ヒガネとむ、西風にしかぜさむきがたう熱海あたみ名物めいぶつなりとか。三島街道みしまかいだう十國峠じつこくたうげあり、今日こんにちかぜ氣候きこう温暖をんだん三度さんどくもごと湯氣ゆげいてづるじつ壯觀さうくわん御座候ござさふらふ後便こうびん萬縷ばんる敬具けいぐ
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
項羽は、今日いくさの始まる前に、二十八人の部下の前で『項羽を亡すものは天だ。人力の不足ではない。その証拠には、これだけの軍勢で、必ず漢の軍を三度さんど破って見せる』
英雄の器 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
富士河ふじがはふねがたし。はぐくみまゐらす三度さんどのものも、殿との御扶持ごふちたまはりて、つる虚空こくうはこびしかば、いま憂慮きづかことなし? とて、年月としつき夜毎々々よごと/\殿とのうつくしきゆめておはしぬ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
三度さんど笑う)云わば甚内を助けると同時に、甚内の名前を殺してしまう、一家の恩を返すと同時に、わたしのうらみも返してしまう、——このくらい愉快な返報へんぽうはありません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
頃日このごろく——當時たうじ唯一ゆいつ交通機關かうつうきくわん江戸えど三度さんどとなへた加賀藩かがはん飛脚ひきやく規定さだめは、高岡たかをか富山とやまとまり親不知おやしらず五智ごち高田たかだ長野ながの碓氷峠うすひたうげえて、松井田まつゐだ高崎たかさき江戸えど板橋いたばしまで下街道しもかいだう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……しかし、のちとも三度さんど食事しよくじなり、みづなり、ほこらようしてくれたのはをとこで。ときとすると、二時三時ふたときみときそばじつわたし仕事しごとる。くちさず邪魔じやまにはらん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三度さんど頭の上の雲を震わせた初雷はつらいの響を耳にしながら。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)