)” の例文
此不自然な昔人の考へを、下に持つた物語として見なければ、カグ木実コノミではないが、匂ひさへもぎ知ることが出来ないであらう。
妣が国へ・常世へ (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
そこに何時の間にぎつけてきたのか、れいの鼠の皮のような茶いろの帽子をもって、女がほそながく立っていたからであった。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
し彼に咫尺するの栄を得ば、ただにその目の類無たぐひなたのしまさるるのみならで、その鼻までも菫花ヴァイオレットの多くぐべからざる異香いきようくんぜらるるのさいはひを受くべきなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あまりそつくりなので私は前に進んで「パイロット」と云つてみた。すると起き上つて私の方にやつて來て私をいだ。撫でゝやると、大きな尻尾を振つた。
道二つにわかれて左の方に入れば、頻都廬びんずる賽河原さいのかわら、地蔵尊、見る目、ぐ鼻、三途川さんずのかわ姥石うばいし、白髭明神、恵比須、三宝荒神、大黒天、弁才天、十五童子などいうものあり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人々につて犂返へされた湿つぽい土からはほか/\した白い水蒸気が立ちのぼり、それと共に永い冬の間どこにもぐことの出来なかつた或る一種の生々したにほひが発散してゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
毛色のかわった犬一疋いっぴきにおいの高い総菜にも、見る目、ぐ鼻の狭い土地がら、おもかげを夢に見て、山へ百合の花折りに飄然ひょうぜんとして出かけられたかもはかられぬを、狭島の夫人、夜半より
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船長は自分の鼻を疑うように、しきりに空気をぎながら、僕にきいた。
周囲の人と自分とをぎわけ得るやうな人もなささうに見えた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
袴野の下著したぎを取り出したが、ふと、野伏の下著もそれにまぜて抱え、日あたりの谷間の岩のうえに坐り込み、野伏の下著をひろげると、その臭気をいでさわりを頬にあててさわってみた
「鹽は——ぎ鹽は?」
乳房から下腹部にかけて例のじいんとして来た、彼女はたぐり寄せてすがるようにまた下著をいだ、そして勢好く裸になると谷川の淵に飛びこんだ、泳ぎ終ると下著をそれぞれにすすぎ
櫛にしては珍らしい絵で、その上、おあいが鼻のさきへ持って行ってごうとしたが、一向いっこうあぶらの臭いがしなかった。なんだか水苔のような、じめじめした匂いが湿って鼻孔を圧してきた。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
「百合根、いただくわ、もやしは厭よ。じゃ、すぐ戻るわ。おばさま、もう、白椿が咲いているからおりになっていいわよ、とてもいい匂いだから、俟っている間にいでいらっしゃい。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)