髭面ひげづら)” の例文
かれらが生い立った武蔵野のすすきをそのままという髭面ひげづらをそらせて、坂東声を遠慮会釈えしゃくもなしに振り立てるいわゆる「猛者もさ」の巣窟である中に
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
百日の秘結ひけつをいっぺんに下したような朗々寛々たる身構えになり、肥えたあか髭面ひげづらもにわかに活気を帯びてきた。
岩吉の髭面ひげづらが、お鳥の頬とすれすれに、息と息とが絡み合って居ることさえ稀では無かったのです。
裸身の女仙 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
それとなく辺りをうかがうと、この室内には一行六人の外に彼等を連れてきたたくましい髭面ひげづらの番人が一人、そのほかにこの工場の人らしい職工ズボンをいた男が三人いて
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かうつづけて、高岡軍曹たかをかぐんそうはやがてことば途切とぎつたが、それでもまだりなかつたのか、モシヤモシヤの髭面ひげづらをいきませて、かんあまつたやうに中根なかね等卒とうそつかほ見詰みつめた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
憔悴やつれ切った髭面ひげづらを並べて、船室に頬杖突きながら、舷窓越しに逆巻く潮流の壮観さに見惚れていたのであったが、この潮流の中へ捲き込まれてみて初めて、世界の航海者が
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
五町にいた水戸中学の津川五郎子、非常なヘビーを出して遥か先頭に進み、続いて髯将軍、羅漢将軍等、髭面ひげづら抱えてスタコラ走ってく有様は、全く正気の沙汰さたとは思われず
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
あるいはいいのかまずいのかわからぬが多少下手に近い絵の前へ立った時、ややこしい絵だとも評するし、髭面ひげづらの気ぶしょうな男の顔を見てややこしい顔してますといったりする。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)