高飛車たかびしゃ)” の例文
こいつは高飛車たかびしゃに出て、一遍で夫人を追い払うのがいいと思った。さいわい、今夜の海龍倶楽部の会議迄には一時間ほどの余裕があった。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
葉子はぽんと高飛車たかびしゃに出た。そしてにやりとしながらがっくりと顔を上向きにはねて、床の間の一蝶いっちょうのひどいまがものを見やっていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
築土新吾坐ると同時に、相手に物をいわせまいと、勝ち誇った高飛車たかびしゃ態度。そればかりか両手を差し出して、いただくように上向けた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、さすが向う見ずな、山手組もせいたかも、天降あまくだった天女の高飛車たかびしゃに度胆を抜かれて、退くともなく御方の駕の左右にさっと引分けられてしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼくが家で勉強してるかどうか、あなたにはわからないでしょう」とわたしは、いささか高飛車たかびしゃに言い返したが、たじたじの気味もないことはなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「エルガーは当代第一の大作曲家である。貴下がなんとおっしゃろうと、エルガーの作品レコードは全部送るであろうぞ」と高飛車たかびしゃに言って来た話がある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
千円ぐらいの小使い銭では間尺にあわない、もっと大きなたのみごとについて、彼の胸の中で策略がめぐらされてでもいそうに思えて、安江は高飛車たかびしゃに出た。
雑居家族 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
葉書一杯いっぱい筆太ふでぶとの字は男の手らしく、高飛車たかびしゃな文調はいずれは一代を自由にしていた男に違いない。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
と堀口生は高飛車たかびしゃに出た。元の親分だから、いざとなるとしがきく。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お民は、次郎の顔を見るなり、例によって高飛車たかびしゃにどなりつけた。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、ひびきの強い、張り切った女の声が、高飛車たかびしゃにいった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
高飛車たかびしゃに出たら随分痛快だろうね
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
葉子は夫人の前に軽く頭を下げていた。夫人もやむを得ず挨拶あいさつのまねをして、高飛車たかびしゃに出るつもりらしく
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
またひどく高飛車たかびしゃだった。到底、勝目のない戦局に立ちながら条件についてとやかくいうならば、もう一戦のほかはないというような極言まで敢えてした。そしてまた
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実になんとも言えず魅惑的みわくてきな、高飛車たかびしゃな、愛撫あいぶするような、あざ笑うような、しかも可愛かわいらしい様子があったので、わたしはおどろきと嬉しさのあまり、あやうく声を立てんばかりになって
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
と、高飛車たかびしゃに出た。健は向きなおってまた口をとがらし、少しどもりながら
赤いステッキ (新字新仮名) / 壺井栄(著)