馬糧まぐさ)” の例文
かの女の駒に付いていた口取の小者が、馬糧まぐさを飼っているあいだを、かの女も、草の穂に戯れながら、そこらを、すこし歩いていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黒助兄哥、濟まねえが馬糧まぐさの中を探さしたよ、——それから、相澤樣、黒助には給金の殘りも御座いませう。五十兩ばかり持たして、故郷へ歸してやつておくんなさいまし」
馬糧まぐさの中から出て来たのは、これも宿場の牢人どもで、きょうの布令に、ふだんの懶惰らんだ一蹴いっしゅうして、寒さも睡さも忘れている仲間だった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黒助兄哥、済まねえが馬糧まぐさの中を探さしたよ、——それから、相沢様、黒助には給金の残りもございましょう。五十両ばかり持たして、故郷へ帰してやっておくんなさいまし」
独楽をッぺたにしつけたまま、馬糧まぐさのなかにやがてグウグウ寝入ねいりこんでしまったかれこそは、まことに、たわいのないものではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やかたがわになってみれば、何千がんといっても多寡たか馬糧まぐさで、いてもしいものではあるまいが、でるにでられない蛾次郎と竹童こそ災難さいなんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬も日に何升かの馬糧まぐさは食うが、これを田に使えば、人以上に耕し、これにになわせれば、汗して荷駄にだえきをつとめる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところもあろうに、こんな馬糧まぐさだらけな馬糧小屋ごやのなかで、いきなりぶつかりあおうとは、両童子りょうどうじ、どっちもゆめにも思わなかッたことにちがいない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大和やまとの柳生の庄のはたご屋に泊った時、はたごの小茶ちゃんという少女と、馬糧まぐさ小屋のわらの中で、つねったり、かじりついたりして、ただちんころのように
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯水、松明たいまつ馬糧まぐさなどもそなえおけと布令ふれいたせ。——戦いおわらば、汝らにも、褒美あろうぞ。——早や行け
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清十郎も憎い、小次郎も憎い、八王子で、酔っている自分を馬糧まぐさ小屋へ引きずりこんだ牢人者も憎い。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桶屋の軒には桶を叩く音が洩れ、うまやの裏には馬糧まぐさを刻む音が静かにして、各〻がその職分に精出し始めると、炎天の城下町は、人通りさえ稀れで、からんと、往来の道ばかり白く乾いていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬糧まぐさいて、将台も焼き払え」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)