馬廻うままわ)” の例文
私の家は黒田藩のお馬廻うままわり五百石の家柄で、お父様は御養子でしたが、昔気質かたぎの頑固一徹とよく物の本やお話にあります。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬廻うままわりの福島正則ふくしままさのり、ニヤニヤ笑いながら、秀吉の前へひざまずいた。京都の仮陣営かりじんえい、ここに天下の覇握はあくをもくろんでいるかれ、めしむまもないせわしさ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文政ぶんせい四年の師走しわすである。加賀かが宰相さいしょう治修はるなが家来けらい知行ちぎょう六百こく馬廻うままわやくを勤める細井三右衛門ほそいさんえもんと云うさむらいは相役衣笠太兵衛きぬがさたへえの次男数馬かずまと云う若者を打ちはたした。それも果し合いをしたのではない。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それはちょうど、たち北側きたがわにつづく馬廻うままわり役の長屋ながやの近くである。そこにっている屋根やねの高い馬糧小屋まぐさごやかられたせいろうのように白いけむりがスーとめぐっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
塙代与九郎の家は三百五十石、馬廻うままわりの小禄とは申せ、先代与五兵衛尉よごへいのじょうが、禁裡馬術の名誉以来、当藩馬術の指南番として、太刀折紙たちおりがみの礼を許されている大組格おおくみかくの名家じゃ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
……自分はお納戸なんど向きのお使番つかいばん馬廻うままわりの家柄……らざる事にかかり合うまい……。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、木村又蔵またぞう合図あいずをすると、おッといって馬廻うままわりの武士、月毛つきげ黒鹿毛くろかげの馬三頭のくつわをならべ、馬具ばぐ金属音きんぞくおんをりんりんとひびかせて、三人の前へひいてきた。と——伊那丸いなまる
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百石取の安馬廻うままわりの家を相続しているにはいたが、お納戸なんど向きのお使番つかいばんという小忙こぜわしい役目にわれて、道中ばかりしていたので、桝小屋ますごやの小さな屋敷も金作という知行所ちぎょうしょ出の若党と
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬廻うままわけん使役つかいやくの、富森助右衛門とみのもりすけえもんであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)