飯台はんだい)” の例文
旧字:飯臺
けやきのまあたらしい飯台はんだいをとりまいて徳利をはや三十本。小鉢やら丼やら、ところもにおきならべ、無闇に景気をつけている。
今し方工場から帰つたばかりの嘉吉は、いつもの癖で仕事着のまゝまる飯台はんだいの一方に場広くあぐらにわつて、もうがつ/\やらかしてゐた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
げんに五間くらいの土間に、飯台はんだいが二た側、おのおの左右に作り付けの腰掛が据えられ、がまで編んだ円座えんざが二尺ほどの間隔をとって置いてある。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「浩二が捉まり歩きをする時分には困ったよ。飯台はんだいへかかったと思うと、いきなり斯う両手で泳ぐようにして、お茶碗でも何でも皆ひっくりかえしてしまうんだもの」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
箪笥たんす一本買えず、ただ、鍋、釜、バケツ、水がめ、米とぎ桶、飯台はんだい、箸、茶瓶、などというような、まったく、食うに必要な、最小限度のものばかり、新夫婦のくるまって寝る蒲団も
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そこへ、亭主が、おげの御飯を塩にぎりにして、一杯ずつの味噌汁をつけ、奥から持ってきて飯台はんだいにのせると、角兵衛獅子のお三輪乙吉、いつもだけの小銭を出して、すぐ、ムシャとふるいつく。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茣蓙ござか、囲炉裏いろりか、飯台はんだいか。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「年に一度か二度のこったが」脇のほうの飯台はんだいで職人ふうの、中年の男二人が、飲みながら話していた
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
作次は壁際に並べた飯台はんだいの端に、独りはなれて腰を掛け、突出しの小皿を二つ前にしたまま、ゆっくりした手つきで飲んでいた。年は三十六七、あぶらけのぬけた灰色の顔に、眼と頬が落ちくぼんでいた。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)