)” の例文
そこで日当りの好い欄干らんかんに身をたせたり、頬杖ほおづえを突いて考えたり、またしばらくはじっと動かずにただ魂を自由に遊ばせておいてみたりした。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると生みの母親は冷淡に、「いけませんよ」といって、その手から木下をぎ去った。堺屋の主人は始め不快に思ったが、生みの母のすることだから誰も苦情はいえなかった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
小野さんは橋の手擦てすりに背をたせたまま、内隠袋うちがくしから例の通り銀製の煙草入を出してぱちりとけた。はくを置いた埃及煙草エジプトたばこの吸口が奇麗に並んでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「聞かないでも分かるのか。まるで巫女いちこだね。——御前がそう頬杖ほおづえを突いて針箱へたれているところは天下の絶景だよ。妹ながら天晴あっぱれな姿勢だハハハハ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
廊下のはじに立って、なかば柱に身をたせたお延が、継子の姿を見出みいだすまでには多少の時間がかかった。それを向う側に並んでいる売店の前に認めた時、彼女はすぐ下へ降りた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの娘が障子しょうじを半分開けて、開けた障子にたれかかって庭を見ていたのさ
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生は半分縁側の方へ席をずらして、敷居際しきいぎわで背中を障子しょうじたせていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから椅子のに坊主頭をたして、一寸部屋のうちを見廻しながら
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから椅子いす坊主頭ぼうずあたまたして、一寸ちよつと部屋のうちを見廻しながら
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
春の日の午過ひるすぎなどに、私はよく恍惚うっとりとした魂を、うららかな光に包みながら、御北さんの御浚おさらいを聴くでもなく聴かぬでもなく、ぼんやり私の家の土蔵の白壁に身をたせて、佇立たたずんでいた事がある。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
津田はそれに全く無頓着むとんじゃくであると云った風に、何か考えながら、二人の間に置かれた長火鉢ながひばちふちに右のひじたせて、その中に掛けてある鉄瓶てつびんふたを眺めた。朱銅しゅどうの葢の下では湯のたぎる音が高くした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)