青玉せいぎょく)” の例文
うでもなれ、左を試みに振ると、青玉せいぎょく黄玉こうぎょくも、真珠もともに、月の美しい影を輪にして沈む、……たつくちは、水の輪に舞ふところである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
閼伽あかの具はことに小さく作られてあって、白玉はくぎょく青玉せいぎょくで蓮の花の形にした幾つかの小香炉こうろには蜂蜜はちみつの甘い香を退けた荷葉香かようこうべられてある。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
老人はいつの間にやら、青玉せいぎょくの菓子皿を出した。大きなかたまりを、かくまで薄く、かくまで規則正しく、りぬいた匠人しょうじん手際てぎわは驚ろくべきものと思う。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ゆえに理論は余をしてやむを得ず未来存在を信ぜざるを得ざらしむ、もし神はブラジルの金剛石、ボゴタの青玉せいぎょく、オフルの金を以て懶惰貪慾不義をもよそおいたまうなれば
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ひかげはもうヴェランダののきを越して、屋根の上に移ってしまった。さおに澄み切った、まだ秋らしい空の色がヴェランダの硝子戸を青玉せいぎょくのように染めたのが、窓越しに少しかすんで見えている。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
冠の底を二重にめぐる一ぴきの蛇は黄金こがねうろこを細かに身に刻んで、もたげたるかしらには青玉せいぎょくがんめてある。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宣徳せんとく香炉こうろ紫檀したんの蓋があって、紫檀の蓋の真中には猿をきざんだ青玉せいぎょくのつまみ手がついている。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)