まじ)” の例文
新字:
斷崖の一隅にがんの形をなしたる低き岸あり。灌木まばらに生じて、深紅の花を開ける草之にまじれり。岸邊には一隻の帆船を繋げるを見る。
震災前、即ち改築前の大學の庭には此草が毎年繁茂して、五月なかばには紅緑の粒をまじへた可憐な花の穗が夕映のくさむらに目立つた。學生として僕ははやく此草の存在に注意した。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
荒野あれのの吐息まじり、夕されば風そよ高木かうぼくゆるぎも加はるそのこゑよりも繁きは
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
さうです?——まじりけのない粗金あらがねきたな鐵屎かなくそよりも遙かにいゝよ。あなたは私を疑つてるやうですね。私は自分を疑つてはゐない。私は、自分の目的が何か、動機どうきが何かといふことは知つてゐます。
下界人間にまじはりては、望の生ける泉なり。
びるぜん祈祷 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ほぐし難くうちまじりたる群集ぐんしふ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
媼さらば其男を喚び返して得させむとてテレザが髮とジユウゼツペが髮とを結び合せて、銅の器に入れ、藥草をまじへて煮き。
義太夫聲にまじじつの女の鼻がかる音聲で「これまで居たのがお身のあだ……」と云ひながら輕く右手の扇子で左の掌を打ち、膝の上に身を立たせるやうにして目を不定につぶりながら
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
ほそりゆき、まじりけち
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
低階の調にまじやはらかなる天使の聲は、男の胸よりも出でず、女の胸よりも出でず、こは天上より來れるなり。こは天使の涙の解けて旋律に入りたるなり。