雛妓すうぎ)” の例文
左に雛妓すうぎを従へ、猥褻わいせつ聞くに堪へざるの俚歌を高吟しつつ、傲然がうぜんとして涼棚りやうはうの上に酣酔かんすゐしたる、かの肥大の如き満村恭平をも記憶す可し。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから本当に子供を虐待するのは、所謂「親方」や雛妓すうぎの抱主だろうが子供を親方や抱主に渡す親達は云うまでもなく生活の必要に迫られるからだ。
社会時評 (新字新仮名) / 戸坂潤(著)
俳優の似顔の目の隈取くまどりや、それを照らす白い強い電燈の光や、それに見入る娘たちや雛妓すうぎらの様子までもはっきり、彼女らの髪油の匂までもありありと、浮かんで来た。
この町人のいちまきはそれだけではない、後ろを見ると、十余名の芸妓、雛妓すうぎたぐいがついている。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いとをあやつる老妓あれば、此方こなたにどたばたひまくられて、キヤツと玉切たまぎ雛妓すうぎあり、玉山くづれて酒煙濛々もう/\、誠にあしたに筆をして天下の大勢を論じ去る布衣ふい宰相諸公が、ゆふべの脚本体なりける
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
予が先輩にして且知人たる成島柳北なるしまりうほく先生より、彼が西京祇園さいきやうぎをんの妓楼に、雛妓すうぎいまだ春をいだかざるものを梳櫳そろうして、以て死に到らしめしを仄聞そくぶんせしも、実に此間の事に属す。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
島原で雑魚寝ざこねをしたくすぐり合いの雛妓すうぎの一人で、最後まで留り残されたあれだな、いや、最後に拾い物をしたあの子供の名が朝霧といったな、これが、もはや妄執となって
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)