雑念ぞうねん)” の例文
旧字:雜念
「…………」無我になろうとする、無想の境にはいろうとする、写経の一字一字に、筆の穂に、あらゆる精をこめて——雑念ぞうねんを捨てて——
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今もその時の空の美しさを忘れない。そして見ると、善にせよ悪にせよ人の精神凝って雑念ぞうねんの無い時は、外物の印象を受ける力もまた強い者と見える。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
脂肪の焼ける匂ひや、ものゝ煮こぼれる音や、煙りの中に、私は暫くの間雑念ぞうねんを忘れて立働く。
脱殻 (新字旧仮名) / 水野仙子(著)
つまりこれは一しん不乱ふらん神様かみさまねんじ、神様かみさま自分じぶんとを一たいにまとめてしまって、ほかの一さい雑念ぞうねん妄想もうそうはらいのける工夫くふうなのであるが、実地じっちってると、これはおもいのほか六ヶむつかしい仕事しごと
役人である、代官である、父である、そうした雑念ぞうねんも無用じゃ。ただ、こうをあわせ、念仏をおとなえあるがよい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(——牛のかわりに、この中へ入っていたら、暢気のんきであろうな。おれのように、なかなか雑念ぞうねん煩悩ぼんのうも捨てられない奴は、それがいちばん解脱げだつの近道かも知れないぞ)
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)