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隻手
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せきしゆ
「ぢやア、どんなものがある?
隻手の聲など云つて、
徒らにヰト、頓智を弄してゐるに過ぎない。」
汝炎威と
戰へ、
海も
山も
草も
石も
白熱して、
汝が
眼眩まんとす。
起て、
其の
痩躯をかつて、
袖を
翳して
病魔に
楯せよ。
隻手を
拂つて
火の
箭を
斬れ。
戰ひは
弱し。
脚はふるふとも、
心は
空を
馳よ。
内懷に
隻手の
印を
結んで、
屋の
棟に
呼びたい、と
思ふくらゐである。
「矢ツ張り、
隻手の聲で、祕密だと云ふのか?」