隧道とんねる)” の例文
ほばしらの樣な支柱を水際の崖から隙間もなく並べ立てゝ、其上に停車場は片側乘つて居るのである。停車場の右も左も隧道とんねるになつて居る。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ほばしらの様な支柱を水際のがけから隙間すきまもなく並べ立てゝ、其上に停車場は片側かたかわ乗って居るのである。停車場の右も左も隧道とんねるになって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今まであの隧道とんねるの惨事以来、彼女に絶えずささやきつづけていた、高代たかよという一事が、今度も滝人の前に二つ幻像となって現われた。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
だから「建たなかった城のあと」で、畳々じょうじょうたる石垣と地下室と隧道とんねるが草にうずもれ、大きな松タアル小さな松グロウ——青苔で足が滑る。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
この愛野あいの、小浜間には小浜鉄道が開通されてあって、私も一度試乗して見たが、それは短い間にいくつかの隧道とんねるを通じ
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
幾個も幾個も長々とした隧道とんねるをくぐり拔け出した時分には、それをひどく心許ながつて、もう一人でなんぞ旅に出て來たことを私は少からず後悔し出してゐた。
馬車を待つ間 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
もし八十助が、瓦斯ガスマスクをかけられていなかったなら、このときプーンと高い土の香りを嗅いだことであろう。たとえば掘たての深い地下隧道とんねるをぬけてゆくときのように。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小さい玩具の電車が、向うの隧道とんねるの中から出て、そこの花野に敷かれた鐡軌レールを傳はつて走る中、橋のない川に來かゝる。すると水中から突如として鐡橋が都合よくせり上がる。
受験生の手記 (旧字旧仮名) / 久米正雄(著)
馬丁は馬に食はせて、今度は自分も乘つて、氷柱つらゝの垂下つた暗い隧道とんねるを指して出掛けた。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ライオンの前ではそれでも久しく立ちどまって見ていた。養魚室の暗い隧道とんねるの中では、水の中にあきらかな光線がさしとおって、金魚やたいなどが泳いでいるのがあざやかに見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
あとでは分ってきた計だが、これは千早の大手櫓おおてやぐらの下へ向って、隧道とんねるを掘りすすめていたのである。坑道を穿うがッて、城兵の致命的な地点へ抜け出で、大手櫓を攻めつぶそうという行動の下地だった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蓬伸びかけろ群れたり隧道とんねるの断れ目の岨の光の崩れ 以下二首坂本の宿
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その箱は遠くからいくつもいくつも隧道とんねるをくぐつてきたのだ
十時、汽車は隧道とんねるを出て、川を見下ろす高い崖上の停車場にとまつた。神居古潭かむゐこたんである。急に思立つて、手荷物諸共あわてゝ汽車を下りた。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
十時、汽車は隧道とんねるを出て、川を見下ろす高い崖上がいじょうの停車場にとまった。神居古潭かむいこたんである。急に思立って、手荷物諸共もろともあわてゝ汽車を下りた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
貴方が、救い出されて救護所に運び込まれた時には、一体どんな顔で隧道とんねるを出たとお思いになりまして。その時、医者はこう申しましたわ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
バイカル——四十六の隧道とんねる。水色美とハヒルスという魚を自慢にしている。アンガラ河。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
三千フイート隧道とんねるを、汽車は石狩から入つて十勝へ出た。此れからは千何百呎の下りである。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
三千フィート隧道とんねるを、汽車は石狩から入って十勝へ出た。此れからは千何百呎の下りである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
貴女には、けっして知るはずのない隧道とんねるの秘密を
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)