隠宅いんたく)” の例文
旧字:隱宅
そしてもなく、わたくし住宅すまいとして、うみから二三ちょう引込ひっこんだ、小高こだかおかに、土塀どべいをめぐらした、ささやかな隠宅いんたくててくださいました。
でも、根気よく、構えのいい武家屋敷や、でなければ、豪家の隠宅いんたく——蔵前くらまえ札差ふださし——そんな所を、よって持ちあるいた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
路地の最も長くまた最も錯雑して、恰も迷宮の観あるは葭町よしちやうの芸者家町であらう。路地の内に蔵造くらづくりの質屋もあれば有徳うとくな人の隠宅いんたくらしい板塀も見える。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
路地の最も長くまた最も錯雑して、あたかも迷宮の観あるは葭町よしちょうの芸者家町であろう。路地の内に蔵造くらづくりの質屋もあれば有徳うとくな人の隠宅いんたくらしい板塀も見える。
かみさまはしばしかんがえていられたが、とうとうわたくしねがいをれて、あの諸磯もろいそ隠宅いんたくよこたわったままの、わたくし遺骸いがいをまざまざとせてくださいました。
大川端から西へ入ってすぐの町中で、この矢の倉の米沢町に老夫婦はしばしの隠宅いんたくを構えていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)