鑑札かんさつ)” の例文
ぼくといっしょでも、すこしとおくへゆくと、さっさとひとりでかえってしまいます。自分じぶんに、鑑札かんさつがないということをっているんですね。
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
(睨む。)あんたが野暮天か道楽者か、その見分けが付かないようで、はばかりながら芸妓げいこ鑑札かんさつを持っていられるかって云うんだ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おあんじなさいますな、ここにみのと、わたくしの鑑札かんさつがあります。お姿をつつんで、これをお持ちになれば大じょうぶです」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は市役所へ行って飼育の登録申請をし、また保健所へ行って、獣医の証明書を提出し、両方から一枚ずつ鑑札かんさつをもらった。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
そして彼女が鑑札かんさつを受けて大びらで稼ぎに出るとなるとこの探偵は尊敬さえもしてくれた。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そのたび権三は六波羅割符わりふをしめし、大蔵は、表に「二階堂」裏に「荷駄組」と烙印やきいんした手脂でひかッている分厚い鑑札かんさつを兵に見せて通って来たのだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんなに、勇治ゆうじいぬをかわいがるのだから、ほんとうの鑑札かんさつけてやろうか。」と、あるゆうちゃんのおとうさんは、クロがよろこんで、ゆうちゃんにびついているようすを
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
丑之助はもちろん鑑札かんさつを持っている。だが、その鑑札を示す必要のないほど、彼も番人たちとは親しかった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『なんで嘘云うたりすることがおますかいな。道具屋の彦兵衛ひこべえ云うたら、順慶堀じゅんけいぼりでも老舗しにせの方やで聞いてみなはれ。この通り鑑札かんさつ持って、諸国を道具買うて歩いてまんのや』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、今度計らずも小野家へ帰参が許されたので、旅先から戻り、一月寺へ鑑札かんさつ尺八を返納して江戸へ入ろうとしたところ、その途中不動院で今日落ち合ったのが重蔵と千浪の二人づれだった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)