鋸屑おがくづ)” の例文
すると、どういふものか出来たのは鋸屑おがくづのやうなカラばかりで、肝腎の豆腐は少しも見られなかつたといふ事を話した。そして気遣ふやうに
製板所の構内だといふことはもくもくした新らしい鋸屑おがくづが敷かれ、のこぎりの音が気まぐれにそこを飛んでゐたのでわかりました。鋸屑には日が照って恰度ちゃうど砂のやうでした。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
小屋こやうちにはたゞこればかりでなく、兩傍りやうわきうづたか偉大ゐだい材木ざいもくんであるが、かさ與吉よきちたけよりたかいので、わづか鋸屑おがくづ降積ふりつもつたうへに、ちひさな身體からだひとれるよりほか餘地よちはない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はつよきの音、板削る鉋の音、孔をるやら釘打つやら丁〻かち/\響忙しく、木片こつぱは飛んで疾風に木の葉の飜へるが如く、鋸屑おがくづ舞つて晴天に雪の降る感応寺境内普請場の景況ありさま賑やかに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
二人は一緒になつて、そこらの木をり倒して、それをたきぎいた。自動車王は少し挽き疲れたので、あたりの切株に腰を下した。そして掌面てのひらにへばりついた鋸屑おがくづの儘で、額の汗を押しぬぐつた。