銀子ぎんす)” の例文
その梶川と一緒になって、内匠頭のやいばを奪りあげたという偶然にも些細な事で、お坊主の関久和へも、銀子ぎんす三十枚の賞賜が下がった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死ぬ、ときめていた間は、なんとも思わなかったが、この船の中に千貫目の銀子ぎんすが沈んでいるのかと思うと、妙な気がしないでもない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ユダ橄欖かんらんの林を歩める時、悪魔彼に云ひけるは、「イエスを祭司のをさたちにわたせ。すれば三十枚の銀子ぎんすを得べし。」
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから命名式の当日はその親族、朋友らからして酒肉あるいは衣服または銀子ぎんす等の贈物おくりものをして来る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
おだどのよりの引出物ひきでものには、一文字宗吉のおん太刀をはじめおびたゞしき金子きんす銀子ぎんす馬代うまだいを御けらいしゅうへまでくだしおかれ、あさいどのよりの御かえしには、おいえ重代じゅうだいの備前かねみつ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
秀吉はまず自分が三つとり、残りを大阪城の西ノ丸の大広間に陳列し、壺の重さ一匁について銀子ぎんす一貫目の割で諸大名に頒けた。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まんじ頭巾の男はもう、卓に酒肴さけさかなを並べさせて待っていた。そして、銀子ぎんす二十両ずつ、二た山にして、彼らの卓の鼻先においてある。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀子ぎんす餞別せんべつの品々を盛って、王進母子おやこに捧げ、かつ出立の日となると、馬や供人をも添えて、関西路かんせいじへ向う隣県まで、ねんごろに送らせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吉之丞は、これも天命とあきらめかけたが、あれだけの銀子ぎんすをむざと持ち去られるのかと思うと、無念でならない。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
酒臭い正体なしの体へ寄って、親切ごかしに胴巻をで探っていた。すると銀子ぎんすと手紙が手に触れたらしい。李吉は狐のような眼をくばった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、半兵衛の病をいたわることも忘れず、その功を賞して、彼には、銀子ぎんす二十枚を薬料として与え、また秀吉の方へは
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わざわざ、吉田山から呼んでおいた兼好法師へ、彼はいろんな物を立ちぎわの布施ふせに贈った。銀子ぎんす、布、茶、料紙、穀類など、持ちきれないほどなものを、家来を付けて、持たせて帰した。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銀子ぎんす七百五十貫、金子きんす八百枚余りありまする」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)